『かけがえのない地球を全人類が共有しなければならない』
カンボジア王国前副首相
国王陛下最高枢密顧問官

サムデク・ノロドム・シリブド殿下


G8サミット参加各国首脳各位に謹んで敬意を表します。

  初めに、世界が地球温暖化、気候変動、環境破壊、天災、貧困、疾病、食料やエネルギーの供給等、数々の地球的規模の危機に直面しているこの重要な時に、G8サミットの開催国となられました日本国政府と国民の皆様に、平安と会議のご成功をお祈り申し上げます。

  同時期、日本ではG8宗教指導者サミットも開催され、宗教的視点からの対話と提言が行われようとしています。G8サミット首脳各位に対し、その声に耳を傾けることの死活的重要性を強く訴えます。G8宗教指導者サミット参加者は、それぞれに自国内のみならず世界的に尊敬を集め、強い影響力を有する高徳の方々であり、その意見は世界人口の大多数の宗教的道徳的価値観を主導する力があります。

  上記の互いに複雑に関わり合い影響し合う幾多の地球的危機に立ち向かうために、世界世論が反映されなければならないことは言うまでもありません。かけがえのない地球を全人類が共有しなければならない今、G8宗教指導者サミットが、世界をより良くしていくうえで決定的な役割を果たすことに疑いはありません。

  G8サミット首脳各位におかれましては、G8宗教指導者サミットが討議し提言することになっている以下の諸点に、ことさらの関心をお寄せ下さいますようお願い申し上げます。

地球温暖化、気候変動、環境破壊に如何に効果的に対処するか。
世界中で何億という人々を苦しめている食料とエネルギー価格の上昇に対して、G8諸国やその他の各国  は、何をなすべきか。
ミレニアム開発目標、すなわち疾病との闘い等を如何に継続させ、目標期間内の実現を達成するか。
より良い世界を実現するために、平和の推進、安全保障、開発、寛容と多様性尊重の拡大、宗教間対話な  ど、われわれの取りう  る手段は何か。
天災に対抗するためにわれわれが個人として、共同体としてなしうることは何か。

  世界市民、なかんずくG8宗教指導者サミットは、G8サミット首脳各位に対し、その知見、技術、資源を尽くしてこれらの困難な課題に全力で取り組まれますよう、強く訴えます。

来月初頭の日本におけるG8サミット開催は、この不安定な時代に先進工業国の指導者各位が現在、そして未来のあらゆる困難な課題に対し、解決策を模索する上での、真のリーダーシップを発揮される最上の機会であると存じます。



『貧困と苦悩のない世界を共に追求』
前カンタベリー大主教 (英国教会首座)
ジョージ・ケアリー卿


親愛なる兄弟姉妹の皆様。

  どうしても回避できない日程上の都合により、この重要な会合に参列できず、たいへん残念に思います。親しい友である半田師を介して、衷心よりご挨拶を申し上げます。

  カンタベリー大主教として、またその後も、私は世界中を旅してきましたが、人類の普遍性と申しましょうか、それぞれが共通して持つものの大きさが深く印象に刻まれています。分裂と壁、境界線ばかりの世の中にあって、私たち人類は、家族と共同体への愛情、そして子供たちにより良い世界を残したいという強い欲求を等しく有しています。

  世界の政治的リーダーたちがサミットで日本に集うこの機会に、私は、この戦争に引き裂かれ、暴力、憎悪、疾病、貧困に悩む世界に、平和と正義と公平をもたらす道が見出されるよう祈願しております。同時期に開催されますG8宗教指導者サミットは、宗教間対話を推進し、貧困と苦悩のない世界を共に追求していくうえで、政府首脳たちの重要な助けとなることでしょう。

  今、環境への脅威と平和への脅威が世界のいたるところで実感されています。この機会に、恐怖を乗り越え、より良い、そしてより正しい世界を実現するために、協調努力する決意を新たにしようではありませんか。   

親しく、実り豊かな会合となりますよう、心より祈念いたします。



『世界市民として平和に共生することができるよう』
エジプト共和国イスラム教最高指導者
アリ・ゴマ(グランド・ムフティ)師


地球的環境危機はいまや見過ごすことができない状況にまで差し迫っています。宗教指導者は、人類に託された自然環境を保護する道義的責任を信徒に教えるという大切な役割を担っています。

  この自然環境を保護するという役割は、創造主(アッラー)の信託によるものです。イスラムの伝承では、神(アッラー)が天地森羅万象に対する責任を下賜されようとした時、それを受けようと進み出たのは人間だけであったとされています。いまこそ、その責任を果たすべき時です。この神授責務を完遂するためには、世界をより安全に、きれいに、そしてより居住性豊かにしていく努力を怠ってはなりません。

  イスラム教では、宗教の五大目的のひとつを「あらゆる形態の生命の保護」と定めています。前途は遼遠であり困難が待ち受けていますが、われわれは最善を尽くして事に当たらねばなりません。このサミットならびに同様の会合が、目標達成への歩みとなることを願おうではありませんか。

  異なる宗教を信じ実践する人々が、世界市民として平和に共生することができるように、宗教指導者たちが、ただ話し合うためだけでなく、一致協力して共存のための国際協定を起草すべき時が来ています。そうすることにより、過激な言動を抑えるばかりでなく、テロリズムや無辜の市民の殺害に対して一貫した断固たる反対姿勢を示さなければなりません。人種差別、反ユダヤ主義、反イスラム主義その他あらゆる形態の差別に反対の姿勢を強く明確に宣言しなければなりません。

  このG8宗教指導者サミットを起点として、険悪な思想を内に秘めた人々に、自らの内面の悪魔と戦うように、そして、宗教が与えてくれる道徳的強さにすがり、闇に代えて光を持つように、強く訴えかけていこうではありませんか。世界に向けて平和を呼びかけ、そのまず第一歩として虐げられた人々の権利を回復すること、そして全人類がお互いを尊重することを求めていこうではありませんか。



『弱者に公平と正義、そして尊厳ある人生を』
リアライジング・ライツ代表
前アイルランド大統領
メアリー・ロビンソン

人権こそ、この会合の中心議題であります。

  日本でG8主要国首脳会議ならびにG8宗教指導者サミットが開催される今年は、「世界人権宣言60周年」という記念すべき年です。ですから、今年の会合は、かかる人権の実現、さらに、それを通して平和と社会正義を実現するための、またとない機会であると言えます。

  これまで幾度となく各国首脳らによって強調されてきた“人権”という概念は、尊いものです。しかし残念なことに、何十億という世界市民にとってそれは、未だに現実のものではありません。むしろ、戦争のもたらす不安や屈辱、暴力と貧困、そして21世紀の繁栄のさなかに起こっている飢餓や予防可能な病気による死、そして私たちを養い、美と喜びを与えてくれる天然に対する脅威、これらがこの人々にとっての現実なのです。

  G8会合の議題に上がっている全ての問題の討議において、私は、女性の視点を前面に出すよう訴えます。俎上に載せられた対策のひとつひとつについて、それが権力の中心からかけ離れたところに生きる極貧の女性の生活をどれほど改善することができるかを考えて下さい。世界のいたるところで、少女らが人権を、日が昇ることと同じように当たり前に感じられるように、彼女らの人生を真の意味で向上させるように。あなた方(主要国首脳と宗教指導者)にはそれが実現できるはずです。

  関心を集める気候変動対策を討議する時であっても、弱者に公平と正義、そして尊厳ある人生を送る機会を与えることは、その議題の中心に据えられなければなりません。

  私は、人類の最盛期はこれからであると強く信じているものです。人権を実現することを通じて、皆が共有するこの夢に向かって前進しようではありませんか。