G20諸宗教フォーラム2019京都 開催

2019年6月11日から12日まで、京都市でG20諸宗教フォーラム2019が開催され、十数カ国から二十数名の代表を含む約140名の宗教指導者、国際機関の代表、大使や専門家などが参加して、現代社会に惹起するさまざまな問題について宗教界からの提言として、6月末に大阪で開催されるG20サミットに参加する各国首脳に宛てて日本政府を通じて提出した。泉尾教会からは三宅光雄教会長が組織委員として、三宅善信春日丘教会長が運営委員長として、日本ではじめて開催されたG20諸宗教フォーラムで中心的な役割を果たした
G20諸宗教フォーラム開会式で歓迎挨拶をする門川大作京都市長

 6月11日午前10時、京都府議会旧本会議場は、G20諸宗教フォーラム2019の組織委員会を代表した三宅光雄金光教泉尾教会長の開会宣言で幕を開けた。最初に同フォーラムの会長を務めた瀬川大秀真言宗御室派管長が開会挨拶を行い、西脇隆俊京都府知事と門川大作京都市長が歓迎の挨拶を行った。前田万葉枢機卿、サウジアラビアのF・マアマアルKAICIID(以下、Kと略す)事務総長、吉村タ英融通念佛宗管長、カナダのJ・クリスティ教会協議会元会長、徳増公明日本ムスリム協会会長、豪州(オーストラリア)のB・アダムス・グリフィス大学諸宗教・文化対話センター所長、村山博雅WFBY(世界仏教徒青年連盟)会長らが挨拶に立ち、同フォーラムの組織委員長を務めた芳村正徳神習教教主が趣旨説明を行った。

全体集会で基調講演をするW・ベンドレイRfP事務総長

 続いて、全体集会一が開催され、同フォーラムの運営委員長を務められた三宅善信春日丘教会長の進行で、RfP(世界宗教者平和会議)のW・ベンドレイ事務総長が今回のフォーラムの方向性を示す基調講演を行った。基調講演に続いて、植松誠日本聖公会首座主教と米国のJ・ディオップ国際宗教の自由協会事務総長と永尾教昭天理大学学長とスペインのK副事務総長のA・アルバチェーテ大使らが、基調講演に対する応答を行った。この後、一行は、国宝三十三間堂を視察した。

三十三間堂を視察したG20諸宗教フォーラム参加者一行

 午後からは、キャンパスプラザ京都において、G20諸宗教フォーラム2019の「中身」に当たる8つのセッションが次々と開催された。第1S:グローバルコンパクト、第2S:気候変動、第3S:AIの脅威と人間の責任、第4S:レジリエント社会、第5S:S科学と宗教、第6S:抑圧された人々と共に生きる、第7S:少子高齢化問題、第8S、格差社会と貧困という、どれも今日的な課題である。

第1S:グローバルコンパクト、第2S:気候変動

 11日には、この内の4つのセッションが行われた。第1Sは、J・クリスティ博士が進行役(モデレーター)で、スペインのL・オルテアウ国際信教の自由防衛連盟事務総長、清澤悟真宗大谷派願得寺住職、J・ディオップ博士がパネリストとして、トランプ大統領に代表される「自国利益優先主義」に対して、SDG’sを推進する観点から警鐘を鳴らした。第2Sは、篠原正徹WCRP日本委員会務部長が進行役で、地球温暖化防止のための画期的な『京都議定書』の締結から22年を経て一向に改善されないこの問題について、下間健之京都市地球環境・エネルギー担当局長、山口克也山口総合政策研究所所長、イスラエルのH・クシェレビッチ大阪大学大学院法律政治研究科生らが熱い議論を交わした。

第3S:AIの脅威と人間の責任、第4S:レジリエント社会

 第3Sは、ロボット研究の専門家である才脇直樹奈良女子大学教授が進行役で、共にエンジニア出身の中村殊萌元真言宗大覚寺派教学部長と滝澤俊文むつみ会宗務長に加えて文理の分野を超えて造詣の深い善信師がパネリストに加わり、人類社会が初めて直面する課題について話し合い、このセッションの内容は、6月18日付、産経新聞で特集記事として大きく取り上げられた。また、第4Sでは、奥野卓司山階鳥類研究所長が進行役で、藤田裕之京都市レジリエントシティ統括官、アメリカ出身のJ・ランゾウ富山市政策参与、今回のフォーラムの事務局長として京都府・市と各種の調整を果たした懸野直樹野宮神社宮司、レバノンのM・アブニメルK上級顧問(シニアアドバイザー)の4名が熱のこもった討議を行った。

歓迎レセプションで挨拶する柳本卓治参議院憲法審査会長

 続いて、京都センチュリーホテルで開催された歓迎レセプションでは、国会開催中であるにもかかわらず、安倍総裁の外交特別補佐である河井克行衆議院議員、柳本卓治参議院憲法審査会長らが駆けつけて祝辞を述べ、半年前から本フォーラムの準備に尽力してくださった庭野光祥立正佼成会次代会長が挨拶を行い、御嶽教の井上慶山管長の発生で乾杯、開宴となった。この歓迎レセプションでは内外の多くの参加者がマイクを取ってスピーチした。

第5S:S科学と宗教、第6S:抑圧された人々と共に生きる

 2日目に当たる12日は、朝からキャンパスプラザ京都において、第5SがスウェーデンのH・ウコ元WfP欧州会長が進行役で、大西龍心高野山真言宗観音院住職、川西宏明チュービンゲン大学イスラム神学研究科生、月ヶ瀬悠次郎ひめじ芸術文化会議代表、善信師がパネリストとなって生命科学のもたらす倫理的問題について幅広い観点からディスカッションを行った。第6Sでは、B・アダムス教授が進行役で、中国によって支配されているウイグル出身のS・メメティ氏、小林秀英チベット問題を考える会会長、天江喜七郎元特命全権大使がパネリストとなって、独裁的な政権によって抑圧されている人々の問題に光を当てた。

第7S:少子高齢化問題、第8S、格差社会と貧困

 第7Sでは、釈徹宗相愛大学教授が進行役で、前野直樹日本ムスリム協会理事、國富敬二WCRP日本委員会事務局長、米国のH・ハインバック女史らがいかにすれば少子化に歯止めをかけることができるかという問題にユニークな解決方法を提言した。第8Sでは、稲場圭信大阪大学大学院教授が進行役で、石川えり難民支援協会会長、村上正俊同志社大学法科大学院(ロースクール)講師、イスラエルのA・マオズ・ペレス法学大学院長、ボスニアのJ・ボストK渉外部長がパネリストを務めた。

「京都宣言」の採択のためのディスカッション

 午後の全体集会2では、8つのセッションの討議の中身を反映した「宣言文」をウスビ・サコ京都精華大学学長のモデレートでディスカッションして、字句や表現を一部訂正した後に採択された(この「京都宣言」は、善信師とサコ学長によって、6月14日に総理官邸へ提出された)。

清水寺で催された公開行事でスピーチをするジェームス・クリスティ博士と「京都宣言」を発表するウスビ・サコ学長

 午後3時、世界中からの観光客でごった返す清水寺の境内に、時ならぬアラビア語でのコーランの聖句が鳴り響いたのには、観光客も「何事か」と足を止めた。続いて、一燈園高校の生徒による少林寺拳法の演武、大阪府佛教青年会有志による読経と続き、さらには、清水寺の梵鐘がG20諸宗教フォーラム参加者によって撞き鳴らされた。司会は、イタリア出身のカトリック大阪大司教区諸宗教対話委員長のR・ビビアーノ神父。J・クリスティ博士が心のこもったスピーチを行い、上杉千文伊奈波神社宮司とサコ学長によって、先ほど採択された宣言文が一般市民の前で読み上げられた。最後に、来年のG20諸宗教フォーラム2020ホスト国であるサウジのK代表が歓迎の言葉を述べ、芳村正徳組織委員長による閉会の辞で公式プログラムは終了した。なお、この日の夜、メルパルク京都において、お別れの晩餐会が催された。

閉会式を終えて、清水寺で記念撮影するG20諸宗教フォーラム参加者


戻る