★★ 御布教七十五年記念式典祝辞(敬称略) ★★


人の善を行うには必ず忍を要す
  
妙智會教団会長 宮本丈靖 

 本日は、金光教泉尾教会布教七十五年記念大祭にお招きを頂きまして、誠にありがとうございます。その上、私に祝辞を述べる機会を頂きましたこと、ありがたく重ねて御礼申し上げます。

 一口に七十五年と申しますが、争いに明け暮れた激動の20世紀、その大半を占める75年の歳月は、どんなにか嶮けわしく長く、また厳しい道であったことかと拝察いたします。

 信徒の皆様、本日は布教七十五年記念大祭、誠におめでとうございます。御教えは今、三宅龍雄先生によってしっかり受け継がれて輝きを増して、新世紀の第一歩を踏み出しておりますこと、心からお慶び申しあげます。

 私は今、85歳ですが、私も人生の多くの部分を三宅歳雄先生と共にしてまいりました。先生のお顔が、今も心に、瞼まぶたに浮かびます。会議のときはいつも、「おっ、宮本君、法友が来ましたね」と笑顔で兄のように迎えてくれました。今日もきっと喜んで下さっていることと思います。

 今、時代は、経済・社会・環境問題すべてのことが、個人や一国家だけのレベルでは真の幸福が得られないことを知り、地球規模で考えるようになりました。共存・共生という言葉も生まれましたが、三宅歳雄先生はその教えを通して75年、己を捨て去って叫び続け、行動に移されました。宗教もまた、宗派の壁を取り去って、共に手を取り合ってこそ、真の世界平和が訪れることを自覚いたしました。今、宗教協力の結びも堅く、その輪を広めております。このことはまさしく泉尾教会の精神であり、信徒の皆さまの75年にわたる、並々ならぬご精進の賜(たまもの)が実を結んでいることに他なりません。

 私どもの教団では、教えを通して、その独自性を「忍善」といたしております。先師のことばですが、「人の善を行うには、必ず忍を要す。小善には小忍あり。大善には大忍を要すべし。花咲かんと欲せば、嵐襲う。月出でんと欲せば、雲かかる。人善を行わんと欲せば、必ず悪来たりてこれを邪魔す」善いことを行うことが、いかに困難であるかということを示しております。

 日蓮聖人のお言葉に「異体同心なれば、何ごとも成就できる」とございます。私も、宗教者として、皆様と同じ心で世界平和実現のため、祈りを込めて行動いたします。

 今年5月にニューヨークで行います、国連子ども特別総会に参りまして、世界の宗教NGOを代表して、あいさつをする機会を頂いております。三宅歳雄先生のご精神を自分の心の糧として、今日までまいりましたが、今まで以上の祈りと行動をもって、一生懸命精進してまいります。どうぞこれからも見守って下さい。

 泉尾教会の益々のご発展を祈念し、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。


泉尾教会願は大乗菩薩願と同じ

比叡山延暦寺執行 清原惠光

 比叡山延暦寺の代表役員執行(しぎょう)職を務めております清原でございます。ご指名によりましてご祝辞を申し述べさせていただきます。

 本年、金光教泉尾教会様には布教75年をお迎えになり、只今はその記念大祭が厳粛かつ盛大裡に執り行なわれましたこと、誠におめでとうございます。
ご先代教会長の三宅歳雄先生が、昭和2年正月、この泉尾の地に、人助けの布教の第一歩を記されて以来、御神願に従って多くのご信徒をお導きになり、わが国諸宗教の中でも有数の教会として発展され、今やご当代教会長の三宅龍雄先生のもと、内外に亘わたり活発な宗教活動を展開されていることに、甚深の敬意を表するものであります。

 75年の間、去る第二次大戦末期から戦後にかけて、国中の混乱と飢餓の頃には、教会のすべてを投げ出して人々の救済に尽くされたと承っております。

 ご布教40年にあたる昭和42年に新築された現在の壮大な会堂や、さらに隆々たる貴教会の今日のご存在は、「世のすべての難儀を祈り助けよ」との神様から頂かれたお言葉に従って、ひたすら実践に努められたその尊い証として仰ぐところでございます。

 人々の幸福と平和への願いは、つとに世界の宗教との交流・協力・対話に目を向けられ、特に世界宗教者平和会議(WCRP)の発展には中心的な役割を果たされ、また爾来、この方面におけるご活躍は、誠に敬服にたえません。

 この頃より、当比叡山延暦寺とも葉上阿闍梨(はがみあじゃり)を通じて深いご縁が結ばれ、やがて昭和62年比叡山開創1200年を記念して開催された比叡山宗教サミットには、最も大きなご協力を頂きました。その後、続けられている「比叡山世界平和祈りの集い」には、毎年教会長様にはご登叡ご参加くださっていることに、深く感謝申し上げるものでございます。

 同年正月の御布教六十年記念大祭には、天台座主山田恵諦猊下が、平成4年の七十年大祭には小林隆彰執行が出席随喜し、それぞれ祝辞が述べられ、また、本日ご指名を受けて私がお祝いの言葉を奉呈することができますのも、そのようなありがたいご縁によるところかと存じます。

 このところ、世界には由々しき事態が多発し、内外の人心ないし国土の荒廃が進むなか、われわれ宗教者の使命はとりわけ重大でございます。この時に当たり、貴教会が一貫して掲げられた「人を助けてわが身助かる」の大願は、伝教大師が大乗菩薩の理念としてお述べになった、「己を忘れて他を利する、忘己利他」に外ならぬことと、誠に尊く思うものでございます。

 神様のご加護と教会長様のお導きのもと、金光教泉尾教会様には人類救済のご使命をさらにご遂行下さることを願い、併せて貴教会の益々のご発展とご信徒各位のご繁栄をお祈り申し上げて、祝辞といたします。誠におめでとうございました。



人類の幸福を追求するのに懸命

カトリック枢機卿 白柳誠一

 本日、泉尾教会の皆さんが、布教七十五年の素晴らしい記念の日をお迎えになられたことを教会長様でいらっしゃる三宅龍雄先生をはじめ、関係ある皆様方、そして教会員の皆様方に心からお慶び申し上げます。本当におめでとうございます。

 先ほどもお言葉がありましたけれども、一口に75年と申しましても、本当に大変な75年であったと思います。おそらくこのように短い期間にこのような大きな変革が、相次いで起きた時代というものはなかったのではないかと思います。政治の形態も変わり、あるいは社会のいろいろな面が変革を来しました。それにも増して、人の心は大いに揺れ動き変わってまいりました。

 そのような中で、金光教泉尾教会の皆さんが本当に信仰を深め、固め、そして、それを信じるだけではなく実践に移してこられたということは、本当に素晴らしいことであり、その陰には、前教会長様でいらっしゃった三宅歳雄先生、そしてその片腕であられ、その跡をお継ぎになられた龍雄先生、このお二人の強力なご指導の賜たまものかと存じます。私がこのお二人のことを思います時、大変恵まれた方だと思います。

 この先生方の情熱というものを、私はお二人にお会いする度に感じておりました。先生方が真理を愛し、そしてその真理を追求する姿は本当に感動的でした。私がお会いするのは、主に世界宗教者平和会議日本委員会の席上でございましたが、先生方はいつもはっきりとした理念を持っておられ、そして、主張すべきことははっきりと主張し、その人類の幸福を追求するのに本当に一生懸命でございました。

 私たちはただ、自分自身の魂の救い、あるいは平安を求めるだけではなくて他の人、「全世界の人が幸福になるように」という願いを込めて、歳雄先生や龍雄先生は戦後直ちに強力な運動を展開なされました。伺うところによりますと、100回を越える程、海外にも出掛け、そして平和を説き続けられたと聞いております。この情熱、これはまさに陸上選手が目標に向かって一途に走る姿であり、そのために絶えず訓練を惜しまない深い情熱を持っているその姿であります。私たちがものごとを行うとき、情熱を持って行う、それが成功に繋がることだと、この両先生の歩みを通して私たちは教えられております。

 この度、この泉尾教会の皆さんが、七十五周年というひとつの大きな節目を迎えられたわけでして、この節目を単なる節目としてではなく、過去を顧み、そして現在の姿をよく見、そして、将来に向かって一大躍進を遂げるたいへん大切な時だと思います。これからも教会長先生のご指導の下、皆さんのこの共同体がますます発展しますように、そして、また、世界平和のためにも、ご活躍くださいますようにと祈念しながら、お祝いの言葉に代えたいと思います。本当に本日はおめでとうございます。


なんでもの願いという秘訣
          
世界宗教者平和会議国際事務総長 ウイリアム・ベンドレイ

 尊敬いたしております三宅龍雄先生、ご来賓の皆様、そして本日ご参集の泉尾教会の信徒の皆様。

 私たちは、ここに集い、三宅歳雄先生の類い稀なご生涯を親愛の情をもって想い起こしております。皆様とこうして集うということは、私にとって望外の喜びであります。そして、三宅歳雄先生を私たちはなんと鮮明に思い出すことができるのでしょうか。そしてまた、私たちが三宅歳雄先生を思う時、なんと心が先生への賞賛と愛で満たされることでしょう。

 WCRP(世界宗教者平和会議)の事務総長として三宅歳雄先生に感謝を捧げられることを光栄に存じます。そしてまた、三宅歳雄先生が創設者のお一人として、WCRPのためにご尽力されたことを、私は世界中のWCRP関係者を代表して、この場をお借りして御礼申し上げます。申すまでもなく、三宅歳雄先生は、WCRPを小さな種から、現在のよく枝を張った若木へと育て上げられたのです。ここで私自身の経験について申し上げたいと思いますが、私は、本日ご参集の皆様と同様に、三宅歳雄先生によって生まれ変わり、また深く感動したたくさんの人々の中の一人なのであるということでございます。

 いかにすれば、三宅歳雄先生への心からの想いを皆様と分かちあえるのでしょうか? 私は、先生と親しくお付き合いさせていただき、そのお心はライオンのような強さと勇気を持ち、なおかつ平和の象徴である鳩のような穏やかさをお持ちだということを知りました。先生はまた、人類が直面している大きな課題に真剣に取り組んでおられました。同時に先生は、いつでも、どんな小さなことにも隠れた美しさを見出され、そしてとてもユーモアのセンスをお持ちでございました。先生は、平和への情熱に、その身を捧げられました。

 私が若かりし頃、三宅歳雄先生は、師の類い稀な人生の「秘訣」を私にも分け与えてくださいました。実際、私はまさに、ここ泉尾教会で先生の人生の「秘訣」について幾度も教えていただきました。求めようとする者には誰にでも、先生はこの「秘訣」を積極的に分け与えてくださいました。この「秘訣」というのは簡潔にして奥の深いものです。解決不可能な、いかなる難儀に直面する時も、三宅歳雄先生はできうる限りの努力を惜しまず、そして前進すべき道を神さまがお与えになると信じておられました。先生は神様を絶対的に信じておられました。「神様に不可能はない」ということをご自身の経験からご存知だったのです。三宅歳雄先生は「なんでもの願い」に生きておられましたので、そのお心はいつも神様の無限のお力に解放され、「不可能なし」の祈りの生活を送られていたのです。これこそが三宅歳雄先生が皆さまと分かち合うことを望まれた偉大なる「秘訣」なのです。

 三宅歳雄先生の素晴らしく偉大な業績に満ちたご生涯は、世界中の多くの方々に愛され賞賛されております。ここでもう一度申し上げたいのですが、もしも、神様が先生を通してお働きになられたのなら、神様は誰であろうとも、たとえこの地球上でもっとも無力な人であろうとも、その人を通してお働きになることができるのです。日々の信心生活を過ごされ、素晴らしき泉尾教会を築かれました三宅歳雄先生のあらせられ方こそ、金光教泉尾教会なのであります。

 三宅龍雄先生、先生は三宅歳雄先生の跡を継がれて、この美しき信仰共同体である泉尾教会を導いておられます。三宅龍雄先生は申すまでもなく、泉尾教会の皆様どなたもが平和への情熱を持っておられます。先ほど、三宅歳雄先生とのエピソードを申し上げましたが、三宅龍雄先生との特別な関係も申すまでもないことであります。先生のリーダーシップの素晴らしさを私はどれほど間近に拝見させていただいたことでしょう。また、三宅龍雄先生の平和を求める英知に溢れた情熱と、WCRPへの先代親先生と変わることのないご支援を、どれほど体験させていただいたことでしょう。先生、諸宗教協力の活動に、どうかこれからもいっそうのご指導をくださいませ。私は三宅歳雄先生の「秘訣」を学ぶ未熟な生徒としてこのお願いを申し上げます。そして、この泉尾教会において、先生は幾度となくご指導くださり、神仏への信心から生まれる平和を築く力を分け与えてくださいました。

 最後に、私をこの地において先生の家族の一員として迎えてくださったことに感謝申し上げます。



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