スクマル・デイビッド氏
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6月17日、泉青創立八十周年青年大会が開催され、世界連邦アジア青年センター(AYC)国際事務局長のスクマル・デイビッド氏と、AYCムンバイ支部長のラジャラクシュミ氏が、それぞれ『今、アジアに必要なこと!』という講題で記念講演を行った。AYCは大恩師親先生のご指導によって1984年3月に発足し、現在では、その活動範囲を南アジアを中心に8カ国11支部にまで広げているアジア有数のNGOである。泉尾教会はAYCの創設以来、現会長である親先生に至るまで変わらぬ積極的な支援を行っている。二番目に講演を行ったスクマル・デイビッド氏は、1994年以来、AYC国際事務局長として活躍されている。
金光教泉尾教会のご信者の皆様、そしてAYC日本支部のメンバーの方々に深甚なる謝意を表すると共に、本日、泉青創立八十周年記念大会にお招きいただき、2人の娘と共に参加させていただけますことを、たいへん光栄に思っております。また、この貴重な機会にお招きくださった三宅光雄先生とAYC日本支部長の吉村昇一郎さん、そしてすべての金光教泉尾教会関係者の方々に対し、心からお礼を申し上げたいと思います。
本日、私はAYC国際事務局長としてこの場に参加させていただきましたが、これはとりもなおさず1984年にAYCを創設された三宅歳雄先生から偉大なインスピレーションを賜ったおかげだと思います。私が三宅歳雄先生に初めてお目にかかったのは、1989年にスリランカのコロンボで開催された第7回世界連盟アジア代表者会議の席でした。三宅歳雄先生と出会ったことは、私の人生にとってかけがえのない出来事でありました。親先生は、先見の明を持たれた預言者であり、社会開発や平和実現に向けた統合を推し進める優れた指導者でもありました。そのお志やご情熱は、現在の三宅家のご一統様方へも受け継がれており、われわれAYCメンバーは、三宅歳雄先生の孫であられる三宅光雄先生のリーダーシップの下で、今千年紀(ミレニアム)も意義深い発展を続けています。
私がAYCと関わり合うことになったのは、1987年にAYCチェンナイ支部のメンバーになったことがきっかけで、同年9月にバングラデシュのダッカで開催されたAYCの年次総会に参加する機会を得ることができました。その時、私は幸運にも他の創設時以来の方々―ジェームズ・アルプサラジ博士、バングラデシュのカイザー氏とザーマン氏、ネパールのシャンタライ・ムルミ氏、スリランカのキングスレイ・ロドリゴ氏、タイのワットチャリネ氏、コルカタのアルンドハティ・ムクヘラジ女史―にもお会いすることができました。
この最初の出会いとAYCメンバーとの相互交流は、私に「AYCでよりアクティブな役割を担う」という夢を与えました。そして、私は徐々にチェンナイ支部と密接な繋がりを持つようになりました。1994年2月にダッカで開催された年次総会において、私はAYC国際事務局長に選ばれ、2000年には、チェンナイ支部のメンバーという立場から、インドのハイデラバードにもAYCのひとつの支部を立ち上げさせることができました。この支部は、現在約275人の若者がメンバーとなっています。
私は国際事務局長として、ダイナミックなリーダーシップを持たれたAYC会長三宅光雄先生と共に活動できることを誇りに思っています。2007年3月10・11日に、第8回AYC年次総会がハイデラバードで開催されましたが、その時、日本からは三宅光雄先生率いる7人のメンバーが参加されました。総会が成功裏に閉幕することができたのは、AYC日本支部と金光教泉尾教会の時宜を得た努力とご支援を得られたことが大きな要因であったと思います。折に触れ、大阪からメールと電話で指導をしてくださった香西俊雄氏にも、この場を借りてお礼を述べたいと思います。
年次総会終了後、三宅光雄先生をはじめとする日本からの参加者の皆さんが、ささやかながらもわれわれの支部メンバー全員が努力を傾けている、現在開発中のプログラムを見学しに足を運んでくださいました。
現在、私はフルタイムの社会福祉士として仕事に取り組んでいます。私は中産階級の家庭に生まれ育ち、両親の情熱のおかげで教育を受けることができました。5年間の大学在学中、私の主な研究課題は『開発途上にある地方都市の社会福祉について』で、1982年に卒業した後は、貧困層や最低限の生活を営む、地方(農村)における下層階級を対象とした様々な能力開発分野を扱うフルタイムの社会福祉士としてキャリアをスタートさせました。IRDS(地域総合開発サービス)というボランティア団体の創設メンバーとして、かつフルタイムのスタッフとして活動を行っている私の心情の源は、わが両親、亡き妻、そして2人の娘たちです。IRDSは、貧困を排除し、絶え間ない自助努力によって、(発展から取り残されがちな地方の)健全な成長を促進するための団体です。
▼IRDSは誰のために?
現在、発展途上にあるわれわれIRDSの「パートナー」は、すなわち、ストリートチルドレン(路上生活児)や、最低限の生活をしている子供たち、地方および下層階級の人々、売春行為を余儀なくさせられている女性の犠牲者、恵まれない漁師の団体、HIV感染者と二次感染したその子供たち、ハイデラバードのスラムの住人、そしてインドのアンドラ・プラデシュ州およびマデュラ・プラデシュ州の地方の若者たちです。
他の市民団体のように、われわれIRDSの活動も山あり谷ありで、失敗もありましたが、社会問題に基づく様々な必要性に取り組むことにより、衆目を集めています。IRDSは、7人の社会福祉士と4人の技術者、そして5人のコーディネーターに加え、175人の支援者によって構成され、コミュニティメンバーの能力開発や役立つ人的資源の活用に取り組んでいます。1999年以来、IRDSはエイズ感染予防運動をハイデラバードに隣接した都市における7,500を超える家庭に広めましたが、とりわけこの運動は、困窮生活を送る売春婦の間で重要な役割を果たしています。
約45人のストリートチルドレンが、トレーニング、カウンセリング、生活支援、リハビリテーションそして職業紹介を受けながらセンターで暮らしています。ハイデラバードに隣接する都市も含めて、これまでにこのセンターを利用したストリートチルドレンは、3,750人にも及びます。
欧州委員会との協力で、私たちは沿岸部に居住する行政サービスから阻害された漁師コミュニティーを繰り返し襲う自然災害に対処することを可能にしました。漁師は、災害の主な被災者です。われわれは、27カ村、延べにして4,700家族をカバーし、また2004年末に発生したインド洋大津波救援活動の際は、金光教泉尾教会の迅速なサポートを得て、必要な衣食を被災者に提供しました。
また、『マイクロクレジット』は、われわれが長く取り組んでいるプログラムのひとつで、農村地域に居住する約1万4,000家族に対し、確立された生計システムを備えた能力開発や、現金収入が増大するような活動を通して、経済的に支援しています。
▼志を同じくする他の団体と協力して
同じ志を持った他の団体と協力することは、われわれの運動を推進する上で大変重要な要素です。現在、われわれの国内レベルでの重要なパートナーは、NAGO(インドエイズ制圧機構)、インド政府、国内人権委員会、地域医療健康庁、SPARCムンバイ支部、ABCバンガロール支部、そしてハイデラバード国際信託です。
国際レベルのパートナーとしては、ドイツのアンドヘリ・ヒルエ、フランスの『エイズと行動』、オランダの欧州人権財団、日本の『人間の土地』、スペインのECHO
MPDL、カナダのマクマスタ大学、欧州委員会、そして世界銀行です。
私たちはまた、志を同じくするNGOや、さまざまなことを共有し学習するための拠点を地域社会に置き、また、民衆の側に立って、政策決定者に対し影響を及ぼすことのできる組織であろうとしています。あるいは、そのモデルケースの普及を活動ベースとする生活共同体ともネットワークを持っています。IRDSは、地方において、有効かつ持続可能な影響力を持って、地域コミュニティーと共に綿密な調整を重ねながら仕事をしています。
▼IRDSの次の目標
グローバル化の進行に伴う現代の諸問題、また、現代の経済的秩序と発展の傾向。選ばれたコミュニティの発展を可能にするために、拡大再生産するための手段を確保すること。そして、彼らが世界の潮流であるグローバル経済の犠牲者になることを予防します。また、同じ志を持つNGOの学生たちや、メディア、国際ボランティアとのネットワークも増加しています。
結論を述べる前に、私はいくつかの明確な考えを全ての若き未来のリーダーたちと共有したいと思います。
今日、世界は私たちのアイデンティティーを曖昧にし、かつ私たち人類が、現代文明のより大きな利点を享受できるようになるか、それとも、うまく機能しなくなった巨大なシステム間の残滓あるいは結果として消え去ってしまうかの瀬戸際にあります。新しい文化は地球の至る所で出現しますが、その背景には、この文化を形成する人々や技術があります。新しい文化には常に主流となる人々が居り、それらを掌握しています。
未だに多くの市民団体は、彼ら自身が社会の中心部(政治経済的中核)から疎外されていると感じています。市民団体は、その考え方や物質的条件、およびグローバルな文化やそれがもたらす成果を手に入れることに関して、非常に制限を受けています。ですから、この新しい世紀の挑戦への舵を切るためにも、われわれはより社会の中心へと介入する必要があります。
グローバル経済―グローバルとは、通信手段や権力の一極集中のことですが―国境紛争、テロリズムや天然資源の奪い合いは、人類にとって新たな挑戦が必要であることを明らかにしつつあります。その結果、人類にとって最大の難題は、生活の中における新しい挑戦に対応できる様々なサービスを必要としていることです。
私たちは、人間の苦境を知るためにも、異なる社会的水準においてどんな英知が発明されているかを分析し、内省する必要があります。誰しも私たちを繁栄―完全な幸福ではなく、苦痛を取り払う―ヘと導く様々な形の生活へ向かう素晴らしい道を歩むために、科学の技術や発展、そして人間の能力を認めたいのです。
今日の盛大なる青年大会において、私は、有能かつダイナミックなリーダーシップを発揮される三宅光雄先生のお祈りの下、AYC事務局長としてあなた方の前に立っております。私は、AYCの将来を見据えたビジョン、使命、ゴール、そして地球上のすべての市民社会団体に共通するであろう関心事を育てていくためにも、人々の生活やその諸条件の質的な改善、人々の注意を喚起して問題を引き出すために自らを捧げたいと思います。
われわれは、国家の壁を越えて、ひとつの家族として共に働くことを大切に思っていますし、むしろ、あらゆるチャレンジを楽しんでいます。創立八十周年を迎え盛大に開かれた青年大会は、われわれに世界中で苦しんでいる人々に対するより深い情熱と責任感を喚起させました。われわれはAYC本部とすべての支部の活動基盤を強めることによって、率先して献身する能力を持つことができるのです。
私たちは皆、幸福と繁栄、そして弛(たゆ)まぬ努力と活動維持に情熱を注いでくださっている三宅ファミリーの力強い福祉に対する情熱的な日々の祈りによって、金光教泉尾教会のご信者様方を尊敬しています。AYCファミリーになり代わり、この度の貴重な機会を与えてくださったことと、皆様の親切なもてなしに対し、もう一度感謝の言葉を述べて、講演を終わらせていただきます。有り難うございました。
(原文は英語 文責編集部)