2014年4月3・4両日、英国のバーミンガム大学法科大学院でIARF(国際自由宗教連盟)の国際評議員会が、13名の国際評議員ならびに、本年、8月末にバーミンガム大学を会場に開催される第34回IARF世界大会の実行委員ならびに現地受入(ホスト)委員ら21名が出席して開催された。泉尾教会からは、IARF会長を務める三宅光雄教会長と財務投資委員の三宅善信総長が参加した。
▼教会日程の間隙を縫って
3月末の二代親先生墓前祭ならびに八年祭、4月1日の学業達成祈願祭および朔日感謝祭ならびに大恩師親先生祥月ご命日祭の御用を終えて、4月2日の午前中に関西空港を発つエールフランス航空のパリ経由便で英国のバーミンガム空港へと向かった。関空とロンドンのヒースロー空港を結ぶ直行便がない上に、たとえ関空←→ロンドン便があったとしても、ロンドンからバーミンガムまでの距離が、大阪・名古屋間とほぼ同じ150キロほど離れているので、旅行用のスーツケースを抱えて鉄道やバス等で移動するのは大変なため、関空から直行便が毎日飛んでいるパリやアムステルダムの空港で乗り継いで、そのまま直接バーミンガム空港へと向かうほうが合理的である。
しかも、今回は、往路ではなく復路の関空到着時刻を優先して、パリのシャルル・ド・ゴール(CDG)空港を経由してのバーミンガム入りであった。というのも、国際評議員会を終えた翌5日早朝に現地を発っても、時差の関係で、関空へ帰ってくるのは6日の朝になるからである。ただし、アムステルダム経由のKLM便の関空到着は8時40分だが、エールフランスのパリ経由便の関空到着は8時10分と、30分だけ早い。しかし、この30分の違いが、この春から初めて新幹線を貸し切ってご本部団体参拝をすることになった泉尾団体の新大阪駅発車時刻の9時14分に間に合うかどうかにかかっているからである。幸い、私自身は、昨年7月にパリで開催された「JAPANエキスポ2013」に出演した際、同じコースでバーミンガムを訪れ、今夏のIARF世界大会の最初の打ち合わせ会議をしているので、往路復路とも馴染みの経路でもある。こうして、教会長と私は、4月2日の夜にバーミンガム中心街の駅前ホテルのホリデイインにチェックインした。
翌、3日朝、ホテルで朝食を済ませたわれわれはタクシーで10分ほどの距離にある今回の国際評議員会の会場バーミンガム大学へと向かった。広いキャンパスに到着すると、日本とは違った品種ではあるが、桜が咲いており、また、英国らしく、いたるところに水仙が咲き乱れていた。まず、大学へ着いて行わなければならないのは、本日の会議の「会場」となる部屋を探すことである。幸い、教会長も私も地理的感覚は鋭いので、すぐに会場である法科大学院のビルの3階にある教室が見つかった。実は、大阪を発つ時点では、会場はまったく別のビルであったが、直前に、メイルで会場変更の案内があった。世界中どこにいても、常にネットに接続できる環境を確保しておかなければ、仕事にならない時代になった。
▼民族の坩堝(るつぼ)バーミンガム
われわれ以外の国際評議員は、法科大学院の建物から徒歩10分ぐらいの場所にある大学院生用の宿泊施設ジャラットホールに、既に前々日もしくは前日から滞在していると聞いていたのに、われわれが会場に到着した時点では、見知らぬ顔の男性が1人居ただけであった。彼の名前を尋ねると、ペジマン・コジャステと名乗った。地元の人で、今夏の世界大会の会計を担当してくださるそうである。金融機関で貸し倒れ等を防ぐための危機管理マネジメントを生業にしているイラン系の移民である。名前だけは、事前のメイルで知っていたので、短時間ではあるが、他の皆さんが来る前に、直接、彼と話し合って、おそらく英国在住のIARF役員や事務局員からは正確に伝わっていないであろうIARFの現状と課題について説明できたことは良い機会であった。
かつて「7つの海を支配した」と言われる大英帝国の「遺産」─当然、プラスとマイナスの両面があるが─のひとつとして、この国には世界中からの移民が相当数定住している。そして、その英国でも最も外国出身者の比率が高い都市が、ここバーミンガムである。欧州の都市には珍しく、街中のいたるところに大きなモスク(イスラム寺院)があり、また、頭にターバンを巻いたシーク教徒(インド系)の人々も目に付く。宗教的多様性を第一義とするIARFの世界大会を開催するに相応しい街である。また、諸民族や諸宗教の和解を推進する市当局からもなんらかの支援が得られることが期待される。そうこうしている内に、大学内の宿泊施設ジャラットホールに宿泊している国際評議員やホスト委員会の皆さんたちが次々と入室してきた。
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三宅光雄会長が議長を務めて進行された国際評議員会 |
規約によって国際評議員会の議長は会長である三宅光雄師が務めることになっているので、三宅光雄会長が開会を宣言されると、事務局員であるロバート・パピーニ氏から欠席者名の確認(註:定員19名の国際評議員の内、欠員1名、代理を含む出席13名、欠席5名)がなされた。最初に、シュロモ・アロン副会長の先導による開会の祈りを行われた。もちろん、国際評議員同士は、2010年9月にインドで開催された第33回世界大会において選任されて以来、3年半を経て3回の国際評議員会が日本で開催され、お互い顔見知りであるが、ホスト委員会の人々とはお互いに面識がないので、議長に促されて出席者全員(21名)が短い自己紹介を行った。まず、昨年4月に大阪で開催された2013年度国際評議員会の議事録が採択された。続いて、会長から、過去1年間のIARF活動を30分間かけて各項目毎に報告された。
▼IARFの抱える問題点
続いて、世界大会のホスト委員長であるバーミンガム在住のシーク・アミン氏が8月に開催される世界大会の準備状況について報告し、さらに、世界大会のプログラムや予算について話し合われた。IARFの世界大会で毎回問題になることは、大会を運営するための主要な収入となる大会毎に定められた登録料(1人当たり数万円)をキチッと全額支払う欧米からの参加者数が少ない(註:日本と生活水準がほぼ均しい欧州各国や米国・カナダといった先進国からの総参加者数が、日本一国からの参加者数よりも少ない)にもかかわらず、彼らの多くは、大会登録料どころか大会に参加するための旅費(往復航空券代や英国での滞在費)まで「補助」してあげなければ参加しないインド・アフリカ・東欧などの途上国からの参加者数を増やそうとしたがることである。当然、途上国から選出された評議員たちは、自分たちの参加条件が有利になる欧米選出の評議員の意見に賛成することになる。
だが、問題は、途上国からの参加者に対して旅費援助をするための原資の大部分が、欧米からの参加者によって提供された登録費や寄附金ではなく、日本人参加者からの登録費や日本の加盟団体からの寄附金によって賄われている点にある。つまり、欧米人は「人の褌(ふんどし)で相撲を取って」いるのである。確かに、多数決の原理で、欧米と途上国から選出された評議員の総数は、日本から選出された評議員の数より多いので、IARFの機関決定としては、欧米の主張が通ることになる。しかし、彼らがよく考えなければならないことは、日本人が、たとえ自分たちの主張が通らなくても、従来と同額の資金提供や大勢の大会参加者数を維持し続けるかどうかという点である。どの加盟教団だって貴重な浄財を諸宗教対話や難民支援や平和活動に投入しているのであるから、「同じ資金提供をするのであれば、より自分たちの思いに沿った別の団体に資金提供をしよう」と思うのが当たり前な心情である。IARFは、「自国民から強制的に税金を召し上げることができる国家のような存在ではない。加盟したい人間(団体)だけが任意に加盟している団体である」という、国際NGOについての基本的な認識を欠いている役員が多すぎることが、今日の困難な状況をもたらせているのである…。
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国際評議員会の間違いを指摘する三宅善信師 |
各人が、何を正義だと思うか、あるいは、どういうことに価値観を置くかという問いの前に、たとえその人が科学者であろうがテロリストであろうが、あるいは、仏教徒であろうがムスリムであろうが、本人の主義主張とは関係なく万人が従わなければならないことは、「5+3=8」とか、「100÷4=25」といったような算術(つまり財務)である。これを無視した如何なる論理も、たとえ一見、もっともそうに見えたとしても、必ず、破綻することになるのである。このことは、会議の公用語を何語にするかというよりも、より根本的な命題であるはずであるが、その根本的なことすら解っていない人が存在すること自体、私には理解できない。そういう訳で、IARFの国際評議員会では、いつもかなり多くの時間が、この根本論の解らない人々に対する説明に費やされてしまうので、精神的にも疲れてしまう。そのような状況下で、午前中の会議は進められた。多くの評議員にとっては、バーミンガム大学を訪れるのは初めてのことであり、昼食休憩時間を利用して、開会式を行うホールや分科会会場等に予定されている学内の施設を見学した。
午後のセッションでは、インドにおけるRFYN(宗教的自由の青年ネットワーク)の活動報告が行われ、世界大会直前に開催されることが恒例となっているRFYNの大会ならびに青年に授与されることになった賞金を伴う『グリーリー賞』(註:諸宗教対話の世界で、大恩師親先生の盟友として、WCRPの創設に尽力したユニテリアン・ユニバーサリスト協会の初代会長ダナ・M・グリーリー博士の遺産を元に創設された「グリーリー財団」から指定寄附された資金の運用益によって提供される賞)についての話し合いが紛糾した。
というのも、過去数年間の活動実績を尊重して、インドから参加する青年を中心にRFYN大会を開催しようとする勢力と、欧州や中東や日本からの青年も交えたよりワールドワイドなRFYN大会を開催しようとする勢力が対立したからである。その上、インドからの青年のためにたとえ十分な旅費援助資金を集めることができたとしても、現実的問題として、インドの青年が英国に入国するためのビザを取得するのはかなり困難であるし、IARFの力ではいかんともし難いが、インド人青年ばかり集めたRFYN大会を開催して、もし、そういう事態に陥った場合、いったい誰が責任を取るのだろうか? この団体の最大の問題点は、「その行為の意図さえ善ければ、たとえその結果が好ましくなくてもしようがない」という無責任な発想で意思決定をしてしまうところである。組織の責任者として、そんなことが許されるのなら誰も苦労なんかしない。私に言わせていただけば、国でも、会社でも、NGOでも、「結果責任を負える人物」以外の人物は、組織の意思決定に関与してはいけないと思っている。さもないと、後で大勢の一般会員の皆さんに迷惑がかかるからである。
▼算術ができない評議員
2日目は、初日の議題から積み残した世界大会の予算について再度審議された。というのも、ある程度の参加者数の見込みが立たなければ、登録費による収入も、旅費援助や食費等の支出の概算ができないからである。国際評議員会の議長を務める親先生の強いリーダーシップにより、「日本からの世界大会参加者数は約70名であり、かつ、日本人の参加者数は全体の3分の1以上、2分の1以下という原則を遵守する」との意向表明があり、約10万ドルの世界大会予算が承認された。ここでも問題になったのは、世界大会時の同時通訳関連の費用についてであった。欧米選出の評議員の中には、「同時通訳の恩恵に与(あずか)るのは日本人だけなのだから、そんな費用は全て日本人が出せばよい。同時通訳に27,000ドルも予算を使うくらいなら、その費用でインドやアフリカからの参加者の旅費援助をしたほうがましだ」と悪びれることもなく主張する者もある。
しかし、この人物は以下の2点で完全に間違っている。まず、「同時通訳の恩恵に与るのは日本人だけ」という点である。この人物の頭の中には、「壇上の発表者が英語で講演し、英語の解らない日本人が同時通訳のヘッドセットにかじり付いて翻訳された日本語を聞く」という姿しかイメージできていないのである。だが、その日本人は、英語が解らないのだから、当然、その日本人が発言する際には、日本語でしか発言しないであろう。そうしたら、日本人以外のすべての参加者が日本語を理解しない限り、その人の発言している内容が解らないではないか! そんな簡単なことが想像できない時点で、この評議員は度し難いアホである。あるいは、「日本人がたとえどんな発言をしようとも、無視すればよい」と考えているのであれば、とんでもない差別論者ということになる。つまり、同時通訳は、日本語と英語の両方を理解できる人以外の全ての参加者が恩恵を受けているということである。
次に、もしIARFが世界大会において同時通訳を用意しないとなると、当然、日本語しか解らない参加者は参加する意味がなくなるので、日本からの参加者数が激減することになるであろう。前述したように、大会登録費を支払って参加する欧米からの(つまり、財政的に世界大会に貢献する)参加者の総数が、日本一国からの参加者数よりも少ないという現実を踏まえていない。世界大会の予算を支える収入は、基本的には参加登録費によって賄われている。もし、日本からの参加者が英語を話すことのできる日本人だけに限定したとしたら、10名程になってしまうであろう。そうなれば、それだけで、登録費収入が二万数千ドル減じてしまう。それ以外にも、日本の加盟教団は今回の世界大会のために六万数千ドルの特別寄附を行っているのであるから、世界大会の予算約10万ドルの内、実に9割におよぶ約9万ドルが日本がらみの資金である。それがもし、日本人が10名しか参加しなくても、日本の各加盟教団がこれだけ多額の資金提供をするとでも思っているのであろうか? 日本から70名もの人々が参加するから、そして、その中には、海外での国際会議に慣れていない人も大勢いるからこそ、同時通訳等の手厚い準備もしているのである。
「同時通訳の恩恵に与るのは日本人だけ」と宣ったこの評議員は、日本人の参加者がたったの10名になっても、日本から約9万ドルの資金が提供されるとでも思っているのであろうか? もし、日本から提供される9万ドルの収入がなければ、世界大会の収入はわずか1万ドルということになってしまい、彼らの好きな「偽善的な旅費援助」もできなくなれば、基調講演者への交通費や会場を借りる費用も払えなくなってしまうではないか? 例えば、会場を借りる費用が、1万5千ドルだとしたら、500人で借りれば1人当たり30ドルと安上がりだが、50人で借りるのであれば1人当たり300ドルもかかってしまうことになる。基調講演者に支払う交通費等の支出も、参加者総数に関係ないので人数当たりで割り算すればとても大きいことになってしまう。総参加者数の多寡に関係なく1人当たりの出費が正比例するのは、食費と宿泊費ぐらいのものだ。このような簡単な算術ができない者が評議員に居ること自体、理解できないが、このレベルが世界のマジョリティーなのだから、精神衛生上よろしくない。算術は、民族の違いや宗教の違いを超えて、それどころか、古代人であろうと、未来人であろうと、たとえ宇宙人であろうと、万人が従わなければならない根本原理であることは言うまでもない。逆に言うと、財政的な裏付けのない発言をする者は、無責任極まりない者である。
▼飛んで帰って、なんとか間に合う
一方、今回の国際評議員会の主たる目的であった通常の年度予算については、昨年末に財務理事であり英国法人の登記上のカンパニー・セクレタリであったジェフ・ティーゲル氏が、任期途中で辞任し、その後任を本年8月の世界大会までの残存任期で、西田多戈止一燈園当番が暫定財務理事を、米国のエリック・チェリー師がセクレタリを引き継いだが、日程上の都合で、あいにく今回の国際評議員会には両師とも出席できず、また、前年度の決算資料が不十分なため、厳密な数字まで調整できず、2014年度の通常予算については、支出約7万ドル・収入約5万ドルの暫定予算が承認されるに留まった。
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世界大会の「会場」となるバーミンガム大学のキャンパスを視察する
国際評議員会一行 |
昼食休憩後、最も難航が予想された任期が2014年から18年までの次期国際評議員候補者リストについての審議が行われた。過去10カ月間におよぶ指名委員会による審議の結果、会長・副会長・財務理事を含む国際評議員の候補者リストが示されたが、従来は、19名あった国際評議員の定員が、予算の削減とより迅速な意思決定を目指して、北米・欧州中東・南アジア・東アジアの各地域から各2名ずつプラスRFYN(青年)代表とIALRW(婦人)代表および世界大会時に会場から選出される1名の全11名へとダウンサイズすることが昨年春の評議員会で決められたため、従来は「アメリカ大統領同様の三選禁止」条項の下、実質的には2期目の再任がほぼ保証されていた評議員の内、何名かは希望しても再選されないことになり、かつ、北米と東アジアは代表がすんなり決定したが、南アジア地域はインド国内での内紛が影響して、また、欧州中東地域では欧州と中東の勢力争いが影響して、その枠の人選が大いに紛糾した。
続いて、これも昨年春の評議員会からの宿題になっていたIARF活動をより世界に拡大していくための「ナショナル・チャプター(各国にひとつずつ結成することができる支部)」の申請手続きや認可基準、活動報告のあり方等についての審議が行われ、昨年春に申請があったものの「保留」となっていた香港チャプターの設立が承認された。しかし、このことは、中国「本土」における「少数民族問題」と密接に絡んで、今後の問題の種となった。また、現在、その運営のあり方が最も混乱しているSACC(IARF南アジア調整協議会)の現状報告と国際評議員会からの調査団の派遣が承認された。
また、世界大会における各加盟団体の議決権数について審議されたが、事務局提出の資料が不十分で「保留」となった。最後に、4年に一度の世界大会時に改正される『規約』の改訂原案が規約委員会から提出され、一部の文言を訂正して「評議員会からの改訂案」として世界大会に提出されることになった。また、従来は、正副会長・財務理事以外に、評議員の中から4名の執行理事を選出していたが、評議員会のダウンサイズが決まったことから、執行理事職については廃止することで規約改定を図ることとなった。最後に、ホスト委員で平和部会長であるリチャード・ボーキー博士の先導で閉会の祈りが行われ、2日間にわたる熱心な討議は閉幕した。
この日の夕方、日本からの参加者9名で市内のレストランで反省慰労会を行い、翌4月5日早朝、バーミンガム空港を発ち、パリ経由の便で日本時間の6日の朝8時15分に関空へ帰国した。関空での荷物の受け取りに多少時間がかかったので、9時14分新大阪発の本部団体参拝新幹線に乗り継ぐことは適わなかったが、関空から新大阪へ向かう8時45分発特急はるかに飛び乗り、9時45分新大阪発の博多行きののぞみで岡山駅まで行き、そこから在来線に乗り換えたが、岡山駅での急病人発生と駅員の不手際による20分の遅れで、新倉敷駅で下車し在来線に乗り換える泉尾団体に追いつくことはできなかった。それでも、泉尾教会信徒奥城で仕えられた墓前祭には間に合い、祭主の御用もいただくことができたことは有り難かった。