インド南部のケララ州コーチ市において、9月4日から7日までの4日間、世界各国から約650名が参加して、『対立を越えて和解へ:21世紀の挑戦』をテーマに、国際自由宗教連盟(IARF)の第33回世界大会が開催され、ダライ・ラマ14世が基調講演を行った。また、人類共栄会の三宅光雄会長が、第34回世界大会が開催されるまで任期4年の会長に選出された。
満堂の第33回IARF世界大会開会式会場
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▼ダライ・ラマ14世が基調講演
IARFは、進歩的な自由宗教主義者であったユニテリアンの人々を中心に、1900年に米国のボストンで設立された世界最古の諸宗教対話・協力団体である。その第33回世界大会がコーチ市のC・R・C(カトリック・リニューアル・センター)を会場に開催された。
9月4日午後の開会式では、地元コーチ市の市長と大会実行委員長のホミ・ダラー世界ゾロアスター文化協会理事長が歓迎の挨拶を行い、トーマス・マシュー会長が主催者挨拶を行った。
続いて、本大会の基調講演者であるダライ・ラマ14世法王が登壇し、「大量破壊兵器の開発を見るまでもなく、科学技術の発展は必ずしも人間を幸せにするものではない」という論点で講演を行われ、質疑応答に30分も充て、ユーモアを交えた当意即妙の応答で会場を大いに沸かせた。
続いて、日本では「医師としてアフリカの人々を救った偉人」という評価しかないが、第一級の新約聖書の研究家にして、バッハ音楽研究家のオルガニストであり、生命哲学者でもあったアルバート・シュバイツアー博士の名前を冠した『シュバイツアー賞』のダライ・ラマ法王への授賞式が行われ、本会の三宅善信理事がプレゼンテーションスピーチを行い、マシュー会長と西田多戈止副会長(一燈園当番)の手から、ダライ・ラマ法王に『シュバイツアー賞』が手渡された。この賞は、シュバイツアー博士が、IARFの母体となったユニテリアンのメンバーだったことに因んで制定されたものである。人類共栄会創設者の三宅歳雄師は、この賞を1982年に受賞している。
また、西田師は、今回の世界大会のために、一燈園に伝わるマハトマ・ガンジーの「チャルカ(糸紡ぎ車)」を持参し、大英帝国からの独立運動において、ガンジーが、非暴力・自主独立のシンボルとした「チャルカ」をダライ・ラマ法王に回して貰い、そこから紡ぎ出した糸を世界大会参加者が順次紡ぎ出すということによって一体感をシンボライズした。チャルカはインド国旗の中央にも描かれている。
ダライ・ラマ法王と共にチャルカをまわす三宅会長 |
▼マイノリティの人権擁護を討議
大会二日目は、朝の「神道の祈り」で始まり、椿大神社の山本行恭宮司が祭主を勤めて、清々しく厳修された。 また、最初の全体討議@として、『人権を推進するための宗教の役割』をテーマに、インドで著名な社会運動家のスワミ・アグニベシュ師と、米国における中南米系移民の人権保護を行っているピーター・モラレスUUA(ユニテリアン・ユニバーサリスト協会)会長、イスラム教各国で抑圧されているバハイ教徒の人権を訴えているムンバイ高等裁判所のマルジア・ローハニ弁護士らが発題を行い、IARFの国際評議員を務める三宅善信理事がモデレータとなって、丁々発止のワークショップが行われた。
この日の午後には、四年に一度開催されるIARFの最高意思決定機関である「総会」が、マシュー会長が議長となって開催され、財務報告や事業報告等がなされ、世界各国から集った105名の代議員たちから熱心な質問や提案が行われ、意見の衝突に紛糾する場面も見られた。また、夜には、インドの伝統舞踊などの文化行事が行われた。
トーマス・マシュー会長と握手を交わす三宅会長 |
▼アフリカや中東からも多数の参加者
大会三日目は、前日と同じく、朝の祈りに続いて、『科学と宗教:対立か協調か』というテーマで全体討議Aが行われ、ヒンズー教の改革運動の一派であるラマクリシュナミッションのスワミ・マハラジ師と広島平和文化センターのスティーブン・リーパー理事長と前IARF会長のアビ・ジャナマンチ師が発題を行い、インドの前国連大使T・P・スレーニバサン博士がモデレータとなって討論が行われた。
今回の世界大会の特徴は、200名もの青年が参加したことと、長いIARFの歴史でもほとんど例のないスーダン・タンザニア・ナミビア・ウガンダ・ジンバブエなどのアフリカ各国や、サウジアラビア・パキスタン・アルバニアなどのイスラム圏からも多数参加したことである。
なかでも、紛争地域であるアフガニスタンから11名もの青年が参加したことは特筆される。各国からの大会参加者に長年戦場になってきたアフガニスタンの現状を直接訴え、ワークショップで学習すると共に、サークルグループ活動を通じて、それぞれ社会環境の異なる日米欧印各国の人々が意見を交換した。
▼三宅会長 IARF会長に選任
9月6日の午後、第二回目の総会が開催され、前日、執行部から報告された案件やフロアの代議員から出された多くの提案が、次々と議決されていった。最も注目を集めたのは、次期総会までの今後4年間、総会に代わる意思決定機関たる国際評議員会の評議員選挙であり、会長・副会長・財務担当役員を含む19名の国際評議員が選出された。
会長の象徴であるハンマーを受け取る三宅会長
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会長には三宅光雄人類共栄会会長が、副会長にはイスラエルのシュロモ・アロンIEA議長が、財務担当役員には英国のジェフ・ティーゲル法人役員が就任した。全代議員票の4分の3ほどを集めた三宅光雄師は新会長に選出され、マシュー会長に招かれて登壇し、会長受諾演説を行った。
大会第四日目に当たる9月7日は、長期にわたる共産党政権が継続しているケララ州だけでなく、インド全土で交通ゼネストが実施されるというハプニングに見舞われ、各ホテルから会場への足に混乱が見られた。そんな中、『ヒンズー教・イスラム教・キリスト教はインドにおいて共存できるのか』というテーマで全体討議Bが行われ、マンガロール・ゴア大学のシェイク・アリ教授とケララ大学のニナン・コシイ教授とガンディグラム大学のニーラカンタ・ラダクリシュナン教授が発題を行いオランダのウィツケ・ダイクストラEME議長がモデレータとなって討議が行われた。
▼三宅会長 200名の青年と意見交換
昼食休憩後、新しく会長に選出された三宅光雄師と全世界からIARF世界大会に参加した約200人の青年たちが自由に意見交換や提言を行う場が急遽持たれ、三宅新会長は各国の青年たちひとり一人と親しく交流した。最後に、開会式の会場にもなったヨハネ・パウロ2世記念講堂で閉会式が行われ、「IARF会長の象徴」として1960年代から受け継がれている「総会議長のハンマー」がトーマス・マシュー旧会長から三宅光雄新会長へ引き継がれ、四日間にわたる第33回世界大会は無事閉幕した。
青年の中に飛び込んで話をする三宅会長 |
世界大会閉幕直後の7日夜、三宅光雄新会長は、これまで4年間の任期を務めた旧評議員と、これから4年間の任期を務める新評議員を滞在先のホテルに招き、懇親の慰労会を催した。今回、国際評議員の顔ぶれが3分の2ほど入れ替わったので、新評議員が長年任期を務めたベテランたちに解らないことを尋ねる機会を設けたものである。なお、翌8日には選任後第1回の国際評議員会が開催され、帰国した三宅光雄会長に代わって、長年、国際評議員の経験を有する三宅善信理事が議長を務めた。
今回のIARF世界大会には、人類共栄会から17名が参加した。日頃、本ニューズレター等を通じて、南アジア各国における人類共栄会の活動を側聞してはいるものの、実際にインド社会を体験するとしないとでは大違いである。ノーベル平和賞にも選ばれたダライ・ラマ14世をはじめ世界的に著名な講演者から話を聴き、世界各国から参加したその道の実践活動家同士による内容の濃いディスカッションに耳を傾けることももちろん重要であるが、同時に、人類共栄会の会員自らが、インドという世界を自分自身の目で視て、皮膚感覚で体感することも大切である。今回の体験を通して、人類共栄会運動へのコミットメントを強め、かつ、一人でも多くの人々に意義ある人類共栄会に加入してもらえるように働きかけてこそ、世界大会参加の意味があるのである。