世界各国から数多くの宗教者が参加した
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11月20日から22日まで、オーストリアのウィーンにおいて、世界宗教者平和会議(WCRP)の第9回世界大会が『他者と共に生きる歓び』をテーマに開催され、世界百余カ国から約600名の宗教指導者をはじめ国連・各国際機関関係者、政府代表等が参加した。人類共栄会からは、日本の正式代表を務めた三宅光雄会長をはじめ3名が出席した。
1970年に第1回世界大会が京都で開催されて以来、WCRPの世界大会は、これまで5年に一度の割合で、欧州・北米・アフリカ・豪州・欧州・中東・日本と世界の各大陸を巡回して開催されてきたが、前回の世界大会から今回まで7年もの期間が空いてしまった。その間に、世界を取り巻く情勢は、「テロとの戦い」の時代から「アラブの春」に見られるような市民ひとり一人が世界相手に情報を発信してゆく時代へと激変した。
今回の世界大会は、ウィーン市内のホテルを会場に『他者と共に生きる歓び』をテーマに開催され、世界各地から約600人の宗教指導者をはじめ国連・各国際機関関係者、政府代表等が参集したが、その半数は、この7年の間に新たにWCRPに加盟した国々からの代表たちが占め、よく言えばこれまでの慣例に流されることなく新しい視点から会議を進行することができるが、悪く言えば、WCRPが長年積み上げてきたこれまでの経緯を無視した「思いつきの発言」によって、その場凌ぎの会議の中身になってしまう可能性がある。
ベンドレイ事務総長と三宅会長
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今回の世界大会の最大の特徴は、サウジアラビア国王が創設したKAICIID(アブドラ国王国際諸宗教・諸文化対話センター)が共催団体となって、ヒト・モノ・カネで全面的にバックアップしているという点である。それゆえ、従来の欧米のキリスト教や最大の支援国であった日本中心の会議構成からアラブ中心のそれへと変換しており、中東やアフリカからの参加者が増えた半面、日本からの参加者数が激減した。今大会の日本からの正式代表枠は、三宅光雄会長を含めてたった5名分しかなかった。
色とりどりの装束に身を包んだ世界各国からの宗教指導者が一堂に会する中、開会式は11月20日の朝から始まった。L・キシコフスキー実務議長の下、パン・ギムン(潘基文)国連事務総長からの祝辞をはじめ、F・ムアマアルKAICIID事務総長やエラ・ガンジー女史(マハトマ・ガンジーの孫)やW・ベンドレイ事務総長が挨拶を行った。続いて、『子供の保護』に関する特別セッションが行われ、ユニセフのL・バリー局長らが発題を行った。
分科会で環境問題について発言する三宅会長
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午後からは、本大会のテーマである『他者と共に生きる歓び』と題する全体会合が行われ、サウジアラビアのA・ビン=バッヤ地球刷新センター会長や米国ユダヤ人協会のD・ローゼン国際局長らが発題と討論を行った。その後、今大会の四つのサブテーマ、すなわち、@「紛争予防・解決を通して」、A「正しく調和のとれた社会を通して」、B「地球を尊重する人間開発を通して」、C「諸宗教教育を通して」に分かれて分科会を行った。環境問題を審議する第3分科会に出席した三宅光雄会長は、「人間が環境を改善するというよりは、まず、『地球に感謝する』という姿勢が大切である」と力説して、用意した資料を配付されてこの分科会の議論をリードした。
ユニセフのバリー局長と三宅会長
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夕方には、第1分科会での議論を集約したものが、ノーベル平和賞の選考委員でもあるG・シュタルセット名誉オスロ主教らからの論点整理と共全体会合でに報告された。また、連日の昼食や夕食会の時間はもとより、各セッション間の休憩時間も、世界の各地から訪れた宗教指導者たちと意見交換を行う機会となった。三宅善信理事は、WCRPを通じて長年交流があるシリア正教会のマール・イブラヒム大主教の安否について、イラクやシリアのメンバーから安否情報を尋ねた。イブラヒム師とは、ちょうど一年前にウィーンで開催されたKAICIID会議や昨年の比叡山宗教サミットの際にも話し合う機会があったが、激化するシリア内戦に伴う混乱によって、人質として拉致され、220日間にわたって行方不明状態が続いているからである。
オナイエケン枢機卿と三宅会長
2日目は、第2分科会の議論を集約したセッションから始まった。このセッションの進行は、アフリカ司教会議議長のJ・オナイエケン枢機卿である。ナイジェリアのオナイエケン枢機卿のことは十数年前から存じているが、枢機卿は民族的・宗教的マイノリティの人権擁護ということに大変関心を抱いており、三宅会長は、2014年夏に英国のバーミンガムで開催される第34回IARF世界大会に枢機卿を招請した。
続いて2日目の分科会に移り、この日の第3分科会の座長をしたカナダ教会協議会のK・ハミルトン事務総長と親しい三宅会長はこの日も積極的に発言して分科会の議論をリード…。ユニセフのバリー局長らとも意見交換した。ハミルトン女史と世界連邦運動(WFM)の前理事長であるJ・クリスティ博士らとは昼食の時間も諸問題について意見交換を行わった。
午後には、第3分科会の議論を集約したセッションが行われ、ラテンアメリカ諸宗教委員会議長のR・ダマスケノ枢機卿らが話し合いを進めた。また、『女性に対する暴力』に関する特別セッションが、国連等からの代表を招いて行われた。そして、もう一度、四つの分科会が行われた。この日の夕食後に行われたビジネスミーティングでは、向こう5年間の国際委員会の人事等について検討が行われた。
シリアやイラクの指導者と人質解放について協議する三宅善信理事
大会最終日は、国連のA・ディエン事務次長を招いて開催された『保護する責任』に関する特別セッションが催された。これは、現在、国際社会で最も問題になっている問題で、従来の考え方では、主権国家が構成単位である国連は、多国間の戦争防止には有効に機能するが、実際に世界で多発している統治機能を失った破綻国家や独裁国家内において、無辜の民が大量に虐殺され、あるいは難民として流出しているにもかかわらず、誰も彼らに救いの手を差し伸べることができなかった現状をいかに改めてゆくかという問題である。つまり、国際社会は、こと人道や人権問題に関しては、各国の国家主権を超えて介入することができるとする考え方に基づくものである。
その後、アメリカ・アフリカ・欧州・中東・アジア大洋州の五地域に分かれて地域別会合行い、第8回ACRP(アジア宗教者平和会議)が来年8月末の韓国のインチョンで開催されることが発表された。アジア地域会合には初めて北朝鮮の代表団も参加したことが注目された。
昼食後に、閉会式が行われ、大会の「宣言文」が採択された。今回の世界大会を最も特徴付けたのは、「アラブの春」の要因ともなったツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの普及である。各国の宗教者たちも、目の前の壇上で誰かが発題を行っている最中でも、掌中のスマホやタブレット端末を盛んに操作して、会場で今撮影した映像と共に、それぞれの意見をドンドンとネット上に書き込み、全世界に向けて発信していたことであった。