99年 Summer

IARF世界大会事前学習会あいさつ

6月19日、泉尾教会国際会議場において、この夏、カナダのバンクーバーで開催される第30回IARF世界大会関西地区事前学習会が、天理大学おやさと研究所と国立民族学博物館から講師を迎え、IARF日本連絡協議会加盟教団からの世界大会参加予定者ら約60名を集めて開催された。

講演を行なう井上昭夫天理大学おやさと研究所長


IARF国際評議員でもある三宅龍雄人類共栄会会長の開会挨拶に続いて、まず、文化人類学者の岸上伸啓国立民族学博物館助教授が『カナダの先住民族政策の変遷と諸影響:イヌイットの場合を中心に』と題して基調講演を行った。岸上氏は、長年イヌイット(旧称エスキモー)族の生活現場でフィールドワークを行ってきた研究者として、一般の日本人が持っているイヌイットに対する既成概念が全く間違えていること(例えば、「氷の家」ではなくて暖房付きの住宅に住んでいる)や、同じモンゴロイド系の先住民といっても、白人との関係はイヌイットとファースト・ネーションズ(旧称インディアン)とでは全く異なること。さらには、カナダ連邦政府の先住民やアジアから移民してきた少数民族の権利に対する行き届いた配慮(イヌイット語が公用語になっている準州もある)は、日本政府も学ぶべき点が多々ある等、バンクーバー大会の参加者にとっては、カナダ社会を理解する上で大変いい勉強の機会となった。

続いて、井上昭夫天理大学おやさと研究所所長が『宗教多元主義とグローバリゼーションの行方』と題して基調講演を行った。天理教屈指の国際通として知られる井上師は、現代社会の多様性やグローバル化の様相というものを詳細に分析した後、イスラム原理主義のアフガンゲリラとの交流という自身の異文化体験を通じて感知したものと、これまで日本の宗教界で「諸宗教対話」と称して行われてきた数々のイベントや組織とがあまりにもかけ離れていることを指摘し、本当の意味での宗教対話は、個別の事象に即した実践の中でしか可能ではないということを示唆した。

引き続いて、酒井教雄立正佼成会理事長や西田多戈止一燈園当番らを交えて、本学習会の企画立案を行った三宅善信師の進行のもと、パネル討議が行われた。最後に、IARF会長の山本行隆椿大神社宮司が閉会の挨拶を行って閉会した。


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