2月27日、辯天宗大阪本部(大阪府茨木市)において、大阪国際宗教同志会(会長大森慈祥辯天宗管長)の平成14年度総会が開催され、神仏基新宗教から約60名の宗教者が参加した。記念講演では、前アラブ首長国連邦大使の望月敏夫外務省大阪担当大使が、『最近の国際情勢と日本の対応』と題して、昨年9月の同時多発テロ事件以後の国際情勢から、数々のスキャンダルで大揺れの外務省の省内情勢まで、解りやすく解説した。
講演中の望月敏夫外務省大阪担当大使
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総会に先立ち午後1時から開催された理事会では、事務局から昨年度事業報告ならびに会計報告がなされ、出席した理事たちからは、昨年実施された3回の講演会(古代史学者の上田正昭(財)世界人権問題研究センター理事長、儒教学者の加地伸行大阪大学名誉教授、近代制度史学者のジョン・ブリーンロンドン大学日本宗教文化研究所長の3氏)の内容が際だっていたことが高く評価された。また、今年度の事業計画ならびに予算案が上程され、原案通り採択された。
理事会で挨拶する三宅龍雄理事長
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午後2時から開催された大阪国際宗教同志会平成14年度総会は、池田瑩輝理事(真言宗中山寺派元管長)の「平和の祈り」と大森慈祥会長の開会挨拶で始まった。まず、総会の開会が宣言され、宮尾早雄妙道会理事が議長に指名され、議事進行を行った。三宅光雄事務局長から昨年度の事業報告と会計報告および今年度の事業計画と予算案が上程され、いずれも理事会で採択された原案通り承認され、総会の閉会が宣言された。
総会で挨拶する大森慈祥会長
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続いて、記念講演に移り、外務省の幹部で、1年前まで駐アラブ首長国連邦特命全権大使を務めていた望月敏夫外務省大阪担当大使が『最近の国際情勢と日本の対応』と題して、レクチャーを行った。望月大使は、真っ先に、昨年四月の田中眞紀子外相就任以来の外務省全体を巻き込んだ混乱について、懇切丁寧に説明し、マスコミ報道などでは見えてこない、内部の事情に踏み込んだコメントを行い、官僚側の問題点についても素直に反省した。また、講演の本題部分では、冷戦終結後のアメリカによる一局支配は、一方で、グローバル化やボーダーレス化という求心力をもたらしたが、同時に、民族対立や宗教対立といった遠心力ももたらせた。特に、この対立軸が「欧米世界対イスラム世界」という対立構造を生み出してしまったこと。そして、これらの問題点を解決するためにいかなる対応策があるかということについて、4つの具体的な提案を行って講演を終えた。
コーヒーブレイクの後、三宅善信理事(金光教春日丘教会長)の進行で、質疑応答が行われ、葛葉睦山臨済宗桂香寺前住職らから質問が出され、反近代化・反民主化を標榜するのは、何もシーア派やタリバンといったいわゆるイスラム原理主義勢力だけでなく、ワッハビズムを国教に掲げるサウジアラビアをはじめとする豊かな湾岸諸国も同様であり、大きな貧富の差の存在は、いつでも過激なテロリストの温床になりうることが指摘され、アメリカの都合だけによる色分けが如何に根拠を欠いた危険な状況判断であるかなどという問題点が指摘された。
質疑応答中の望月敏夫外務省大阪担当大使
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最後に、この3月で日本を離れることになった国宗会員のG・コマロフスキー元ロシア連邦駐大阪総領事から別れの挨拶があり、三宅龍雄理事長(金光教泉尾教会長)の閉会挨拶および会員の尾立聖兆神道大教石切神宣大教会長による「平和の祈り」で閉会した。なお、大阪国際宗教同志会は、辯天宗大阪本部で今回初めて会合を持ったため、総会終了後に、同教団の本殿に正式参拝し、大森光祥宗務総長から同教団の歴史や教義について説明を受けた。