カナダでG8宗教指導者サミット2010開催

6/20〜23

G8宗教指導者サミット2010が、6月21日から23日まで、カナダのウイニペグ大学を会場に開催され、仏米英露独日伊加の8カ国はもとより、アフリカ・中東・アジア太平洋・南米各地域から約80名の正式代表ならびに地元カナダから多数のオブザーバーが参加し、『宗教者のリーダーシップと行動を喚起する時』をテーマに開催された。


ウイニペグ大学中庭に集合したG8宗教指導者サミット参加者たち

開会に先立つ6月20日、昨年6月のローマに続いて、当サミットの運営母体である「G8宗教指導者サミット継続委員会」が8カ国からの代表が出席して開催され、日本人では唯一、四年連続でこのサミットに参加したレルネットの三宅善信代表(G8宗教指導者サミット2008の事務局長)が出席し、過去三年間にわたって一部日本国内の宗教界で混乱を招いた正閏論争(註:G8宗教指導者サミット実行委員会が2008年6月27日〜29日に大阪と京都で「G8宗教指導者サミット2008」を開催したが、類似の国際会議「平和のために提言する世界宗教者会議」が世界宗教者平和会議日本委員会主催のもと7月2日〜3日に札幌で開催され、両者が「正統性」を主張し合った)に決着がついた。なお、三宅代表は、来年度(フランスで開催)以後もG8宗教指導者サミット継続委員会のフルパートナーとして、この組織の運営に関わっていくことになった。


G8宗教指導者サミット継続委員会で意見を発言する三宅善信代表

21日の午前中は、開会式に先立って、ジャーナリスト会議や人権と宗教的自由に関するシンポ等、各種の専門家会議が開催され、あいにくの雨天にもかかわらず、先住民の代表が「神聖なる薪」に点火し、世界各国からの宗教指導者たちが、これに「神聖なる煙草」が収められた袋を投入し、燻煙が空高く舞上った。この薪は、サミット期間中、絶やすことなく燃やし続けられた。広大なカナダにおける東西交通の拠点で、真冬の最低気温が氷点下50℃にもなるというマニトバ州のウイニペグ市は、歴史的にも先住民の集積地であり、現在でも人口の2割が先住民である上に、近年、アジアからの人口流入も多く、「民族的・文化的多様性」を国是とするカナダにおいても、諸宗教の指導者一堂に会してサミットを行うのに相応しい地である。しかも、会場として大学の施設を使い、総主教や閣僚等も学生食堂で気さくに食卓を並べ、昨年のローマでのサミットとはうってかわって、虚飾を排したディスカッション中心の会議が営まれた。


オーディトリウムで行われた人権と宗教的自由に関するシンポジウム

この日の夕方に行われた開会式では、G8宗教指導者サミット国際継続委員会の議長であるジェームス・クリスティ博士(世界連邦運動評議会議長・ウイニペグ大学神学部長)が開会宣言を行い、昨年のローマでのG8宗教指導者サミットの運営責任者であったアルベルト・クアトルリッチ聖エジディオ共同体事務局長がイタリア共和国外務大臣のメッセージを、ヘグメン・リアビュク駐ジュネーブ代表がロシア正教総主教からのメッセージを代読した。また、地元を代表して、先住民のドゥン・マリチンダレ師が歓迎の挨拶を行った。


カフェテリアで開催されたG8宗教指導者サミット開会式

22日の朝は、ウイニペグ大学のロイド・アクスウォーシ総長(元カナダ連邦上院議員)と真実と和解委員会のムッライ・シンクレア弁護士(先住民)が挨拶を行い、ロメオ・ダレイル上院議員が基調講演を行った。続いて、『極端な貧困と経済』についての実質討議に移り、カナダ教会協議会事務総長のカレン・ハミルトン師の司会進行で、全アフリカ教会協議会事務総長のアンドレ・カラマガ師と、ジャーナリストのジム・ウォリス師が講演を行い、ディスカッションに入った。休憩に続き、『平和と安全』についての実質討議が、地元カトリック・ウイニペグ教区のジェームス・ワイスガーバー大司教の司会進行で、WCCのパク・ソンウォン師の講演とジョン・シーバート氏とウオルター・ルビー氏とロバート・スーダーマン師がパネリストとなってディスカッションが進められた。


G8宗教指導者サミット全体会議

  昼食後、『極端な貧困と経済』についての第2回実質討議が行われ、国際社会正義委員会クミッショナーのクリスティーン・マクミラン女史が講演を行い、討議を行った。世界百数十カ国の首脳が一堂に会して開催された2000年の国連ミレニアム・サミットで採択された『MDG(ミレニアム開発目標)』の達成期限まであと3分の1しか残っていないのに、まだまだ目標達成におぼつかない世界の現状を真剣に捉え、G8各国政府首脳にその早期達成を迫っていくのが当宗教サミットの大きな目的であるため、とりわけ熱心な意見交換がなされた。休憩に続いて、『気候変動』に関する実質討議が、レバノン正教会総主教アラム1世の司会進行で行われ、地球温暖化による海面上昇で国土が消滅する危険に曝されているツバルのフランソワ・ピハーテ牧師が講演を、レルネットの三宅善信代表がパネリストとなってディスカッションを行った。このテーマは、ユダヤ・キリスト・イスラム教などの一神教と、ヒンズー教や神道や先住民のアニミズム等の多神教とでは、大きな意見の対立が存在するだけに熱心な討議が繰り広げられた。


「気候変動」についてスピーチする三宅善信代表

  初日の昼食と夕食は、地元のヒンズー教共同代と救世軍がスポンサーとなり、また、この日の晩餐は、カナダの大手保険会社がスポンサーとなった。このことは、サミットの経費削減だけでなく、地元のより多くの人々にサミットの開催をアピールすることにもつながり、連日テレビ局や新聞社が取材に訪れ、インターネットを通じて、サミットの模様が全世界に発信された。また、同時間帯に約百名の青年による会合も開催された。


晩餐会で「主催者」のクリスティ博士・ハミルトン博士と歓談する三宅兄弟

  23日の朝は、昨晩行われた青年会議の参加者代表が、G8宗教指導者サミットに対して「青年の声」を訴え、大人の代表たちと熱心に討議を行った。この討議では、神社本庁から参加した香取大信師が青年に対して鋭い質問を発していたのが印象的であった。引き続いて行われたセッションでは、MDGの早期実現を迫る「ミレニアム・プロミス」のジョン・マッカーサー氏が講演を行い、当サミットの目的である政治指導者に対する具体的アプローチ方法を討議した。続いて、1919年にウイニペグで起こった人権擁護のための大規模なゼネストをテーマにしたミュージカル『ストライキ』が劇場で上演され、これを鑑賞した。


カナダ国営放送CBCからインタビューを受ける三宅善信代表

  昼食を挟んで、今回のサミットの宣言文を採択するためのセッションが、クリスティ博士の司会進行で行われ、英国国教会首座のカンタベリー大主教 の名代として出席したニコラス・ベインス主教が講演を行い、G8主要国首脳会議へ提出するため、八カ月かけて検討してきた宣言文への最後の修正を加えてこれを採択した。引き続き、閉会セレモニーが行われ、日本代表団の団長を務めた三宅光雄金光教泉尾教会長が装束で「祈り」を行い、カナダ連邦政府のスティーブン・フレッチャー民主改革担当国務大臣がスピーチを、そして開会式でも祈りを務めた先住民代表のドゥン・マリチンダレ師が閉会の祈りを行って、無事、三日間にわたるG8主教指導者サミットが閉幕した。なお、来年のサミットは、バハイ共同体と欧州正教会連合が受け入れ母体となってフランスで開催されることとなった。



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