ラエリアン・ムーブメントとは、いかなる宗教か?
「ラエリアン・ムーブメント」とは――同教団自身の説くところによると――クローン技術によって、25,000年前に人類を創造した異星人エロヒム(Elohim)による地球救済のためのプロジェクトである。「ラエリアン・ムーブメント」の教義そのものは、"常識"ある大多数の人々から見れば、まったく荒唐無稽な話であるが、今回の「クローン人間」誕生という、もし事実であれば、人類史上の大きな"出来事(event)"になりうる問題を提起した教団を突き動かせるモチーフについて、広く一般の人々に知らせる公共的必要性があるとレルネットでは判断したので、以下、同教団の説くところに基づいて、同教団の主な教義と活動について解説する。
▼教祖および立教の経緯
ラエリアン・ムーブメントは、1973年12月13日、フランス人ジャーナリストのラエル(Claude Vorihon Rael)が、フランス中部の山岳地帯で、異星人のUFOと遭遇したことに端を発する。UFOから降り立った異星人エロヒム(註1)の外見的特徴は、身長約140cm、オリーブ色の肌に黒髪でアーモンド型の目をしており、調和とユーモアのセンスに溢れていた。
エロヒムの説くところによると、人類は、異星人がその優れた科学力によって、25,000年前にクローン技術(註2)によって創作したのである。しかし、地球は、人類による(核)戦争・環境破壊等によって壊滅的状態になってしまった。創造者として、地球および人類を見守ってきたエロヒムは、救済史のプロセスにおいて、モーゼ、仏陀、イエス、ムハンマド等の預言者を遣わして、人類にその愚行を悔い改めるように警告を発してきたが、人類はその警告を無視し続けて今日に至った。
そこで、ついに、エロヒムは、地球を「本来の正常な状態」に戻すため、現在に生きる1人の地球人(ラエルのこと)を預言者として選び、異星人たちが再び、この地球に降り立つための施設(Embassy=大使館)を造らせようとしている。
註1: 「エロヒム」とは、もちろん、旧約聖書の『創世記』の冒頭に出て来る創造主「エロヒム(神)」のことである。あまり、オリジナリティがあるネーミングとは言えない。
註2: 25,000年前に人類をクローン技術で創造したとすれば、その「元」は、いったいどこから摂ってきたのであろうか?
エロヒム自身の体細胞の一部なのだろうか? それとも、まったく別の生物の体細胞の一部を遺伝子操作して、新たに「ヒト」という種を創り出したのであろうか?
▼布教活動と主な教義
ラエリアン・ムーブメントは、若者を中心に、全世界に3万数千人の信者がいると言われているが、その内、なんと約10%が日本人だそうだ。同教団の公式サイトにも、日本語のページが選択できるくらいである。30万人が亡くなった広島の原爆についても記述がある。
同教団の「会費」は、「年収の3%」とされている。入信するには、「トランスミッション」と呼ばれる"洗礼"を受ける。この洗礼によって、信者(ラエリアン)個々人のDNAコード(ゲノム)が、エロヒムの宇宙船のホストコンピュータに登録され、たとえその人が死んだとしても、その人の宗教的功績を勘案して、そのクローン技術によって「生き返る」ことができるようになる。
主な"修行"としては、「脳を活性化させるための呼吸法」や、「Aumの発声法」や、「官能瞑想」による宇宙との合一感(オルガズム)の達成、エロヒムとのテレパシーによる交信などが求められる。人類の調和とフリー・セックスも説いている。
▼クローン人間の作製は当然の帰結
同教団の教義によると、クローン技術は「創造主エロヒムの業」そのものであり、他のほとんどの宗教や一般的な政治的決定である「クローン技術のヒトへの応用」の忌避とは、まったく、正反対の立場である。クローン技術は、過ちを繰り返してきた人類を、本来のエロヒムによる創造の目的に添わせるために、作り直すためにも、是非とも取り組まなければならない課題であり、事実、ラエリアン・ムーブメントでは、今年(2002年)の夏頃から、盛んに、年内の「クローン人間第1号誕生」を予告してきた。
その栄えある「クローン人間第1号」である「イブ」という名前の女児が、12月27日に誕生したのである。当初、同教団では、クリスマスに誕生させる予定で計画を進めてきたが、少しそれがずれた。
日本におけるラエリアン教団の動き
レルネットでは、今回の「クローン人間製造騒動」に関連して、注目されたラエリアン・ムーブメント日本支部の動きを追跡した。
▼クローンベイビー誕生祝賀パレードを実施
03年01月19日、ラエリアン・ムーブメント日本支部は、同教団の関連会社クローンエイド社による昨年末の「クローン人間誕生」を祝して、東京都渋谷区の繁華街で「クローンベイビー誕生祝賀パレード」を行った。パレードに参加した約百名信者たちは、「赤ちゃんの写真(註:写真の赤ちゃん自体はクローン人間とは無関係)」や「Yesクローン!」などと書かれたプラカードを掲げて、青山通りや表参道を練り歩き、"正当性"を誇示した。
▼日本人クローンベビー誕生?
03年01月22日、クローンエイド社は、「ラエリアン・ムーブメントの日本人信者に男児のクローンベビー(同教団では3人目のクローンベビー)が生まれた」と発表した。この赤ちゃんは「1年半前に事故死した2歳の男児の体細胞を使ったクローン」で、"両親"である日本人夫婦が、費用として$20万を支払って、同社にクローンづくりを依頼していた。事実とすれば、世界初(前2人は女の子)となる"クローン坊や"は、「日本国内で生まれた」そうである。ただし、今回も、前2回同様、生まれた赤ちゃんがクローン人間であるかどうかの"物的証拠(DNA鑑定)"を示していない。