★ 新レイアウトの意味:曼陀羅と幕の内 ★

 2003年7月7日から、『レルネット』のトップページのデザインが、長年親しまれてきた「左右2分割型」(註:世間のほとんどのサイトは、この「左右2分割型」を採用している)から、「1画面9分割型」に全面改定されたことは、既に、愛読者の皆様がご存じのとおりである。

 本件について、多くの読者から、「以前より見やすく(判りやすく)なった」とか「どういう狙い(意味)があるのか?」という感想や問い合わせを頂いたので、その件について説明したい。

 開設以来5年以上を経過している『レルネット』のサイトが有する膨大なコンテンツを、(特に、これまでの発展の経緯を知らない新しい読者に)如何に判りやすく提供するかについて、長年、構想を練ってきた計画であり、また、その都度その都度、付け加えられてきた複雑なリンクを如何に体系化するかという自己自身の課題でもあった。

  その両者を可能にする方法として、以前から「曼陀羅(マンダラ)」に注目していた。密教の説く「世界観」を一枚の平面上に表現する方法として、二千年間にわたって洗練されてきた「両部曼陀羅」の内、『レルネット』では、『金剛界曼陀羅』の形式を採用することにした。

 『金剛界曼陀羅』は、有機的に関連づけられたそれぞれの9つのゾーンに「分割」されている。そして、各ゾーン毎に、各々その「世界」を主宰する「仏(如来や菩薩)」が居て、よく見ると、それぞれのゾーンの中に、また、「入れ子細工」的に「曼陀羅」が配置されているのである。しかも、それぞれのゾーンが、「上下関係」として固定しているのではなくて、あるゾーンにおいて中心的働きをしている「仏」が、別のゾーンにおいては脇役的存在であったりしているところが、『レルネット』の表現したい世界と共通性があると考えたからである。

 本当は、もっと「曼陀羅」風にオドロオドロしいデザインにしても良かったのであるが、あまりデザインに凝って、画像が「重たく」なると、インターネットサイトのトップページとしては、「開いてもらう」確率が下がるので、現在のあっさりしたデザインとなった。

 しかし、よく考えてみると、このような考え方でレイアウトを配したものは、「曼陀羅」以外にも、現代日本社会において、誰もが毎日のようにお目にかかるものとして2つある。

 ひとつ目は、『幕の内弁当』である。後に韓国の文化大臣も務めたことのある梨花女子大の教授(当時)であった李御寧(イ・オリョン)氏が、その著書『「縮み」志向の日本人』という日本人論で指摘したとおりである。「手先の器用な日本人は、なんでもかんでも、小さな空間にコンパクトに詰め込むのが得意である」という主旨の理論であった。李氏は、その実例として、箱庭・盆栽・神棚等を挙げたが、中でも、最も日本人の特質が現れているのが「幕の内弁当」だというのである。

 ふたつ目は、『携帯電話の画面』である。私の手元には、NTT DoCoMoの『I-mode』なるケータイの画面があるが、どの社の画面も似たり寄ったりである。小さいディスプレイ空間に、効果的に配置しようとすれば、「曼陀羅」的発想をしなければならないのである。

 以上のような訳で、今後とも、奥行きの広がりと共に、分かり易さを追求したレイアウト構成で、さらにコンテンツの充実と検索の容易さを追求してゆく所存である。

                                             三宅善信