「三宅善信代表が『仏教タイムス』紙で緊急提言  01年10月18日




 レルネットの三宅善信代表は、業界紙『仏教タイムス』から依頼を受け、同紙が企画した「緊急提言:テロと報復――宗教的課題の行方――」と題する特集に、チベット文化研究所長のペマ・ギャルポ氏、国連開発計画ヒマラヤ文化圏担当専門官の大工原彌太郎氏に続いて、同紙10月18日付号の1面に『宗教国家アメリカの「性」』と題する小論を発表し、各方面から注目を集めている。

 レルネットのファンにとっては、なじみ深いいつもの展開であるが、三宅代表が説く「アメリカ=ジャイアン論」などは、最近では、田中康夫長野県知事も援用するなど、わが国、言論界に影響力を与えつつあるのは喜ばしいかぎりであるが、一方で、三宅代表が説く「反米・反戦」的な内容のサイトが、国家権力の圧力によるのか、あるいは、当局に遠慮してインターネット業者が「自主規制」しているのか知らないが、いくら「サイト登録」しても、検索エンジンに引っかからないようにされているようであり、由々しき事態であると認識している。


「テロと報復――宗教的課題の行方――」
『宗教国家アメリカの「性」』

三宅善信

 九月十一日の同時多発テロ事件の発生以来、私が主宰する宗教情報専門サイト『レルネット(www.relnet.co.jp)』のヒット数は、連日五〇〇件を超えた。以前から、日本人には馴染みの薄い『イスラム原理主義VS宗教国家アメリカ』という特集を組んで、よくこの問題を採り上げていたからである。

 マスコミをはじめ多くの人は、今回の事件の"首謀者"と名指しされているオサマ・ビン・ラーディン氏率いるアルカイダや、アフガニスタンを実行支配しているタリバンのことを、「狂信的なイスラム原理主義勢力」と決めつけているが、もう一方の当事者であるブッシュ政権や"宗教国家"アメリカの原理主義的性格については、気が付いてさえいない。

 しかし、今回の"戦争"の意味を読み解くには、この構造にまで掘り下げて分析しないかぎり、ワイドショー化した国会審議やマスコミで連日行われている解説と同レベルの議論になってしまう。

 今回の事件が起きた直後、ブッシュ大統領がホワイトハウスから全世界に向けて行った演説の一言一句をもう一度思い出して欲しい。「これは、全人類に対する戦争であり、文明社会に対する挑戦である。必ず犯人を捕まえて"法の裁き"を受けさせる」と言い放った。同様の表現は、十四日にワシントン大聖堂で行われた追悼集会でも繰り返され、ブッシュ大統領は、"法の裁き"と称する報復を誓った。また、その"報復"は、十月七日のアフガニスタンに対する軍事攻撃によって、現実のものと化した。

 ここに、今回の"戦争"の構造的問題があるのである。よく考えていただきたい。「全人類に対する戦争」という戦争が存在するであろうか? 戦争とは、そもそも、人と人とが争うものであり、宇宙人が地球に攻めてきたのなら、そのように言えるかもしれないが、イスラム原理主義者だって立派な人間である。ということは、裏を返せば、「イスラム原理主義者は人類のうちには入らない」と言っているも同然である。同様に、「(自分たちと価値観の異なる)イスラム文明は"文明"のうちには入らない」と宣言しているのである。

 ブッシュ大統領は、その後も不用意に"十字軍"という表現を用いたり、「世界中の全ての国々は、われわれ"正義"の側に付くか、テロリストの側に付くかハッキリすべきだ」と軍事力を背景に「踏み絵」を迫ったりした。これではあまりにも酷いということで、米国務省や英国を中心とする他の同盟諸国が、「これは、西側社会とイスラム世界との戦いではない」と事態の沈静化に躍起になったが、時既に遅く、特に、米軍によるアフガニスタンへの空爆開始以来、世界の各地で"反米"デモが起きる事態となった。

 これらの動きは、世界中で潜在的に燻っているアメリカの自分勝手な論理と抑圧に対する不満の現れである。このことが、残虐極まりないビン・ラーディン(が行ったとされる)のテロを正当化させる温床であり、世界中に、これを支持する人々を産み出す素地を提供しているのである。

 米国の最も間違っているところは、自らの独善を称して"正義"と言い、常に「神がアメリカを祝福しまうように(May God bless America.)」と表現しているところである。これなら、"神懸かりタリバン"と変わらないではないか…。「自己の行為の正当化に"神"を持ち出さないでいただきたい」と日本の宗教者はアメリカに言うべきである。

 世界中の多くの国々が、米国の言うことを唯々諾々と聞いているのは、何も米国に"正義"があるからではなく、あたかも『ドラえもん』のジャイアンのように、彼が"喧嘩に強いだけ"からである。ということをアメリカは知るべきである。

 この二十三・二十四の両日、ニューヨークにおいて、K ・アナン国連事務総長や米国・パキスタンの国連大使も参加して、WCRP(世界宗教者平和会議)が主催する『テロと暴力に反対し、正義に基づく平和を実現するために共働する宗教者』が開催され、これに私も参加することになっている。世界に稀にみる"宗教国家アメリカ"自身がこの独善性に気づき、これを改めない限り、今回のようなテロ事件は後を絶たないであろう。私は、今回の会議で、このことを主張するつもりである。 

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