小泉首相の次なる手は、皇室の政治利用
 04年05月23日


レルネット主幹 三宅善信

▼「独裁者」小泉首相の本性が露見

  ジュネーブでの国際会議から戻って(註:22日のドゴール空港の事故、危機一髪だった)みれば、なんと、「年金未加入問題」打ち消しと、自ら政権の延命目的のためだけの小泉純一郎総理の売国奴的“朝貢”(註:「朝鮮に貢ぐ」と書いて「朝貢」と読む)ショーと化した第2回日朝首脳会談に、開いた口が塞がらなかったのは、私だけではあるまい。

  本件の欺瞞性については、既に多くの識者が問題点を指摘しているので、あらためて屋上屋を足す気はないが、ただひとつあまりマスコミが指摘していない点を掲げておこう。それは、これから国会で可決される予定の『特定船舶入港禁止法案』を念頭にして、昨日の日朝首脳会談で、キム・ジョンイル(金正日)国防委員長に対して、小泉首相が「(北朝鮮が『日朝平壌宣言』を順守する限り)制裁は発動しない」と伝えたことについて、「先に言ってしまっては“外交カード”にならない」と批判している議員が多いそうだが、彼ら自身が、政治家としての最も肝心な「三権分立」の原則について解っていないことのほうがより重症である。

  本発言の最も憂慮すべき点は、国権の最高機関である国会の専権事項である「立法権」に対して、行政府の最高執行者である内閣総理大臣が、「たとえ『特定船舶入港禁止法』を国会が可決しても、(内閣は)それを執行しないから(安心しろ)」と第三国の首脳に事前伝達したことであり、「国会の立法権を無視すること」を対外的に表明した政治家として言語道断の“独裁者宣言”とも言える。内閣総理大臣としての「越権行為」も甚だしい。野党議員諸君は、その点をこそ厳しく糾弾すべきである。


▼「奸臣」を成敗し、国民から拍手喝采を受けるつもり

  さて、本日のテーマである『皇室の政治利用』について述べよう。小泉首相は、7月11日の参議院議員選挙に向けて、「自分の政権存続のために有利な材料になる」と思えば、二十数年来の拉致事件被害者家族の願いすら平気で踏みにじって、昨日のような振る舞いをする人物であるが、もともと、参議院選挙直前の6月末に行う予定だった「拉致家族の引き渡し」パフォーマンス(註:こんなインチキパフォーマンスに騙される国民の民度が低いと言ってしまえばそれまでであるが…)を1カ月前倒しで実施してしまったために、参議院選挙直前に、もっと「国民受け」のする新たなパフォーマンスが必要となった。それを今から予言しておこう。

  そのパフォーマンスとは、ずばり「宮内庁叩き」である。過日、日本の皇族としては極めて珍しいことであるが、皇太子殿下が記者クラブとの「会見」の席上、宮内庁関係者によると思われる雅子妃に対する“人格否定”発言があった。その「事件」を官邸サイドがさらに煽って、「宸襟(しんきん=天子の御心)を悩ます」ところまでエスカレートさせたのである。本来、このような「事件」の起こること自体が問題であり、もし起こってしまっても「沈静化」させなければならないはずの官邸が、なぜ、逆に煽ったのかと言うと、答えは簡単である。“敵役”のヒール(悪者)が必要だったのである。

  大多数の国民が敬愛して止まない皇室に対して、一部の奸臣(註:今回の件であれば、林田英樹東宮大夫がこれに当たる)がこれを壟断しているように演出し、さらには、「尊皇の忠臣」であるところの小泉首相が、選挙前の最も効果的な時期を選んで、これをバッサリと成敗し、国民から拍手喝采を受けるつもりである。なにしろ、百官の任免権者である内閣総理大臣にとっては、東宮大夫どころか宮内庁長官の首ですら、簡単にすげ替えることができるのだから…。ちょうど、昨年秋の「新」民主党の合併大会の政治的宣伝効果を打ち消すために、その日に合わせて解任された藤井治芳日本道路公団総裁の時のように…。しかも、これは越権行為でもなんでもない。

  ただし、自らの政権の保身のために「政局」の道具として、今回のように外交交渉を用いること(これを「売国奴」と呼ぶ)と同様、本来、国民各層に対して“超越的存在”(註:日本国憲法の説く「日本国の象徴であり、国民統合の象徴である天皇」の法的位置づけ)として、政治的には「中立」であるべき「皇室」の政治利用は(特に、天皇の国事行為に対して「助言と承認」をする権能を有する内閣総理大臣は)、厳に慎むべきであることは言うまでもない。本件についてのマスコミや国民諸氏の厳しい監視の目を期待する。

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