新型インフル大流行アメリカ陰謀説

 09年10月19日



レルネット主幹 三宅善信  



▼ワクチン接種の優先順位について

  今日から新型インフルエンザワクチンの接種が始まった。もちろん、「国産品(2,700万人分)」・「輸入品(5,000万人分)」を併せても、限りある分量(7,700万人分)しか確保できないため、当然、「希望者」全員に接種することは不可能である。そこで、「最大多数の最大幸福」を追求する政府(この場合は、厚労省)としては、当然のことながら、予防接種の“優先順位”を付けることになる。はたして、政府も今回の「新型インフルエンザ(H1N1の亜型)」の流行に際して、“優先順位”を発表した。

  その第1位が「医療従事者」であることに異論を挟む人は居ないであろう。実際にパンデミック(爆発的大流行)が起こったときに、肝心の医療従事者自身がバタバタと倒れたのでは、患者の治療どころではなくなってお話にならないからである。しかし、一口に「医療従事者」といっても、発熱外来の医師や看護師、呼吸器内科の医師や看護師らの優先順位が高いのは当たり前だとしても、インフルエンザ治療とは直接のない整形外科や眼科の医師や看護師まで「医療従事者」ということで、優先接種を受けることができるとしたら、文句のひとつも出るであろう。

  優先順位の第2位は「妊婦や持病のある人」である。「妊婦」については誰の目にも明らかである。問題は「持病のある人」である。“持病”といっても、神経痛やヘルニアなど、その人がインフルエンザに罹ったとしても、重症化のリスクには関係のない病気がほとんどである。癌だって、インフルエンザを罹患することによる重病化のリスクは関係ない。厚労省のリストによると、「慢性呼吸器疾患」「慢性心疾患」「慢性腎疾患」「慢性肝疾患」「神経疾患・神経筋疾患」「血液疾患」「糖尿病」「疾患や治療に伴う免疫抑制状態」「小児科領域の慢性疾患」等が「持病のある人」という場合の“持病”に該当する。これらの「持病」のある人たちだけでも、1,000万人は居るであろう。

  第3位は、1歳から就学前(5歳)までの子供。第4位は、1歳未満の乳幼児とその両親。そして、小学生・中学生・高校生。それから「高齢者」という順になっている。この辺まで予防接種の順番が回ってくる時点では、おそらく春先まで季節が進んでいるであろうから、新型(H1N1亜型)インフルエンザの第一波は、すでにその流行のピークを過ぎているであろう。おかげさまで、メタボリックであるという点を除けば、極めて健康である51歳の私が新型インフルのワクチンを接種できるのは、おそらく来年の秋頃になるであろう。しかも、これは、日本という極めて医療制度の整った先進経済大国での話であって、世界中のほとんどの国では、もっと貧粗な対応しか取られないであろう。社会インフラの整わない新興国や途上国は日本とは比べるべくもないが、日本では当たり前のように思われている「国民皆保健」であるにもかかわらず、アメリカでは3割以上の米国民が保健に加入しておらず、十分な医療を受けることができないし、様々な民族が同居し、様々な隣国と地続きで、しかも、国境を越えた往来が自由(『シェンゲン協約』加盟25カ国)になっているヨーロッパでも、伝染病の危険に曝される危険性は日本より遥かに高い。


▼何故、メキシコから流行が始まったのか?

  ところが、この春、メキシコでブタからヒトに感染して始まった(それ故、欧米では、一般に「Swine Flu」(豚インフル)と呼ばれている)新型(H1N1亜型)インフルエンザは、大方の予想に反して、「新型インフルエンザの巣窟」である中国や、衛生状態の悪い東南アジアやアフリカといった地域で流行せずに、何故だか、メキシコで始まって(註:厳密には、アメリカの養豚業者がメキシコへ持ち込んだ)、北米とくにカナダ方面へ拡がり(註:5月のゴールデンウイーク時に第一波が報告された際に、現地からの帰国者を成田空港における「水際作戦(停留措置)」によって隔離、食い止めていたことは記憶に新しいであろう)、さらには欧州方面へも感染したが、いつの間にか、今回のインフルエンザの最大の被害地は、世界で最も公衆衛生の進んだ日本になったことの奇妙さについて、これまで指摘した人(政治家・メディア・医療関係者・軍事関係者・経済関係者)が少なすぎることに疑問を感じる。なぜなら、常識的に言って、不幸なことではあるが、地球規模でこのような感染症が流行した時には、いつも最大の被害者は、恵まれた先進国の人々ではなく、貧しい途上国の人々が犠牲者になることが通例だからである。

  そこで、本題に入る前に、何故、今回の「新型インフル」の流行がメキシコから始まったかについて、考えてみよう。先を急ぐので、結論から先に言う。原因は、2008年秋のリーマンショックに端を発する世界同時不況である。これまで、『主幹の主観』において何度も指摘してきたように、冷戦終結後の二十年間、いち早く「金融資本主義」というシステムを構築したアメリカは、世界中からの資金を吸収して「働かずに喰って」来た。しかし、その「勝利の方程式」のモデルが昨秋の金融恐慌によって破綻したのだ。その間、アメリカの人口は、主に中南米のヒスパニックの人々を中心に、5,000万人も増加した。世界中からマネーを吸収し続けたアメリカには、彼らを喰わしてゆく余力があった。

  しかし、今回の世界同時不況は、たとえ数年後にそれが回復したとしても、その時、従来通りはたしてアメリカが世界の覇者で居続けることができるかどうか――つまり、自由に輪転機を回して、安物の紙に緑色のインクで印刷したドル紙幣を世界の基軸通貨として、世界中の人々に使いさせ続けることができるかどうか――は明らかではない。これまで、マネー資本主義の一翼を担って、額に汗水垂らして働くことのなかったWASPに、再び「現場」の肉体労働をさせるためには、白人より安価な賃金で働くヒスパニックの人口増加を防ぐことが喫緊の課題となった。

  そこで、まず、毎日数万人の不法移民が越えると言われるメキシコとの国境を閉じるもっともらしい理由が必要となった。そこで、メキシコに新型インフルエンザを流行させ、“検疫”と称して、メキシコからの人の流入を食い止める作戦に出たのである。このことは、副次的な効果ももたらせた。何故なら、(アメリカから見て)メキシコの向こう側には、憎っきベネズエラやキューバなど、“反米”を国是としているヒスパニックの国々もあり、「メキシコを干す」ことによって、メキシコ経由で南米まで流れ出していたアメリカの富の流れを断つことができたからである。


▼民主党政権へのアメリカの警告

  しかし、アメリカの本当の狙いは、メキシコなんかではなかった。ずばり、言おう。アメリカ政府の本当のターゲットは、日本――なかんずく、民主党政権になって、自民党政権時代に提供してきたさまざまな対米優遇政策を見直そうとしている日本――である。5月にあれだけ、成田・関空・中部空港等の空の玄関口での昼夜兼行の検疫体制強化と「停留措置」等によって、新型インフルエンザの侵入を未然に食い止めようとして、また、それなりの成果を挙げていたにもかかわらず、夏になると、沖縄県から始まった新型インフルの大流行が、あっという間に、日本各地に拡大し、現時点では、週30万人ペースで流行が急拡大しつつあるのは何故であろうか?


たとえ日本で新型インフルが大流行しても、
完全防備の専用マスクで自分だけは生き残ろうと目論む三宅善信代表

  まず、第一は、鳩山政権による日米安保体制の見直しに対するアメリカ側からの「ブラフ(脅し)」である。インド洋での自衛隊による多国籍軍への給油の停止決定や、米軍ヘリ部隊の普天間基地から嘉手納基地への移転統合案や、「天下の悪習」である『思いやり予算』(註:『日米地位協定』に含まれない法的根拠のない日本政府の在日米軍への拠出金のこと。1978年に時の防衛庁長官金丸信によって設定された)の廃止を鳩山政権が声高に主張していることへの汚い警告であると考えて良い。だから、国際空港もない沖縄から新型インフルの大流行が始まったのだ。疫学的にも、米軍施設から新型ウイルスをばらまいたと考えてほぼ間違いないであろう。米軍施設から新型インフルエンザウイルスがばらまかれたという説に関しては、本年5月17日に上梓した『新型インフル、ゲロンチョリー』で指摘したとおりである。アメリカにとって今や、アジアにおいて困難な相手は、軍事費を急拡大させている中国ではなくて、すべてに「見直し(re-vision)」しようとしている“同盟国”日本であるからである。


▼タミフルの特許期限切れ前に儲けるだけ儲ける

  しかし、この問題は、さらに根が深い。それは、画期的なインフルエンザの特効薬であった『タミフル』の特許権問題と関係がある。新薬の特許(註:人類社会にとって有益と考えられる新しい技術等を発明した人に、一定期間、それを独占的に用いることが許される権利。その技術を用いようとするものは、特許権者に使用量を支払わなければならないことになっている)期間は20年間ということになっている。一般的に、新薬を開発するには膨大な投資と長い期間が必要とされる。その結果、画期的な新薬が開発された――この時点で、特許を申請する――としても、その新薬が、実際に医療現場で使われるようになるためには、わが国においては、一定の条件下での三段階に分かれた「治験」とよばれる臨床試験をパスした新薬だけが、厚生労働大臣の承認を受け、これを医薬品として商業販売することができることになっている。この制度は、先進各国ともにそれほどの差異はない。

  問題は、この「治験」が曲者で、場合によっては、新薬の開発(製造法の特許申請)時から、十数年を経てやっと認可されるというケースもある。そうすれば、特許によって独占的に利益を得ることが保護されている期間はわずか数年間ということになり、その後は、その薬の効果が絶大であればあるほど、数多の「後発医薬品(ジェネリック)」メーカーから類似商品が発売され、画期的な新薬を開発するのに投じたコストや労力を回収することができなくなってしまうのである。つまり、製薬メーカーが儲けるためには、特許期間中に売りまくって儲けまくらなければならないのである。そこで、“悪魔の囁き”として、たとえば、それが特定の感染症に絶大な効能を発揮する薬であれば、なんらかの方法で、そのウイルスや病原菌を意図的にばらまいて、世界的大流行を起こさせて、その特効薬を売りまくるということを考える輩が現出するのは、致し方のない現実である。これらは、いわば、インターネットによって世界中のパソコンが蜘蛛の巣の編み目のように繋がった現代世界において、新手のコンピュータウイルスの開発者が、実はコンピュータワクチン開発会社とマッチポンプになっているのと、同じ構造である。

  こういった観点から、今回の日本における新型インフルエンザ騒動について考えてみると、特効薬『タミフル』の特許期限問題が見えてくる。スイスの製薬メーカーであるロシュ社から発売されている「タミフル(商品名)」は、「オセルタミビルリン酸塩(化学式はC16H28N2O4)」と呼ばれる化学物質で、中華料理で使われる香辛料のひとつ「八角」から採取される「シキミ酸」(註:あの仏壇に供える「樒(しきみ)」から抽出されるベンゼン環状不飽和有機化合物の一種)を何回か化学反応させて合成した化学物質。したがって、八角を食してもインフルエンザに効能があるわけではないことは言うまでもない。つまり、原材料は幾らでも手に入るのであるから、もし造ろうと思えば、一定の設備さえあれば、誰でも簡単に製造できる医薬品である。


タミフルの原料は、中華料理の香辛料の「八角」である

  そもそも「タミフル」とは、インフルエンザウイルスの表面にあるノイラミニダーゼという蛋白質(註:インフルエンザウイルスの表面には、15種類のヘマグルチニンと9種類のノイラミニダーゼという蛋白質があり、これらの組み合わせが「H1N1」から「H15N9」まで144通りのA型インフルエンザウイルスを形成している)を阻害することによって、エンビロープの形成を妨げるものである。この辺の仕組みについては、昨年秋に私が企画した阪大微生物病研究会の上田重晴博士による『懸念される新型インフルエンザのパンデミックに備えて』をご一読いただきたい。


▼間近に迫る韓国や中国の特許破り

  この「オセルタミビルリン酸塩(=タミフル)」の製造特許は、アメリカのバイオ医薬品メーカーであるGilead Sciences(ギリアド・サイエンシズ)社によって1996年に開発(特許申請)され、スイスの世界的製薬メーカーであるロシュ社によって大量生産、全世界に販売された医薬品である。特に、数年前から新たなインフルエンザの世界的パンデミックが懸念されるに及んで、スイスのジュネーブに本部を置くWHO(世界保健機関)からの推奨によって、各国政府が数百万人分単位で備蓄を行ったので、大儲けした会社である。通常どおりだと、タミフルの特許期限切れは2016年ということになる。


わが家にもタップリ備蓄されているタミフルだが…

  しかし、ことはそう単純ではない。何故なら、新型インフルエンザのパンデミックの波が、日本や欧州といった先進国を襲った場合には、これらの国々はせっせと正規の料金(つまり、ギリアド・サイエンシズ社への特許料を含む)を支払って、純正品のタミフルを数千万人分ずつ購入するであろう。しかし、特許権や登録商標権の侵害なんて屁とも思っていない韓国や中国では、ことはそうは行かないであろう。数十万人単位(韓国)、あるいは数百万人単位(中国)で新型インフルの死者が出だした場合、これらの国では、即刻、「わが国政府は、国際的な特許制度の維持よりも、わが人民のいのちを尊重するために、○月○日をもって、タミフルの特許を停止する!」と、一方的に宣言して、タミフルの模造薬を超安価で大量生産することになるであろう。事実、これらの国々は、公的な見解として、それを予告している。国際的な特許権よりも国家主権のほうが優先するという論理である。

  もし、そうなったら、国際世論も、全人類のいのちを人質にとって大儲けを企む私企業の特許権よりも、中国や韓国の大義名分をしぶしぶ認めることになるであろう。そうしたら、中国なんか、13億の中国の人民(この「人民」に「少数民族」が含まれるかどうかは疑問であり、「もっけの幸い」と、漢民族以外の少数民族にはわざとタミフルを供与せずに、民族浄化を謀るかもしれないことには国際的な監視が必要である)に必要な分量より遥かに多くの分量を製造して――なにしろ、タミフルの原料は、中華料理でお馴染みの八角なのだから、中国にはいくらでもある――、全世界に売りまくることは目に見えている。しかも、「人類の存続のため」などというご立派な大義名分を付けて…。


▼インフル大流行の黒幕はラムズフェルド前国防長官

  おそらく、たとえそこまで行かなくとも、国際世論は、「ギリアド・サイエンシズ社は既に大儲けしたのだから、特許の期限を5年間、短縮しては?」と迫って来るであろう。あるいは、そう言われる前に、徳川慶喜の「大政奉還」同様、先手を打って、ギリアド・サイエンシズ社のほうから「わが社は、全人類社会に貢献するために、自ら特許権を5年間前倒しして2011年に放棄する!」と宣言するかもしれない。何故なら、どうせ放置しておいても、中国や韓国の製薬会社が堂々と特許権を侵害してくることは火を見るよりも明らかであり、むしろ、堂々と特許権を侵害されているのに、その行為に対して実際に反撃できなければ、かえって自社の無力さを国際社会に曝すことになり、これから開発される新薬の特許の実効性すらあやふやなものにしかねないことになれば、それこそ元も子もなくなってしまう。

  それに、タミフルに代わるまた新しい特効薬を製造すればそれで良いのだから…。なぜなら、144種類あると言われるA型インフルエンザの内、これまで人類社会の前に出現したのは、H1N1型、H2N2型、H2N3型、H5N1型などまだわずか数種類であり、これからまだいくらでも新薬を開発する余地があるからである。そして、特効薬ができた「新型インフルエンザ」から順番に、マッチポンプでそのウイルスをばらまけば良いのであるから…。

  因みに、1996年に「オセルタミビルリン酸塩(=タミフル)」の特許を取得したギリアド・サイエンシズ社で1997年から2001年まで会長を務めた人物がどなたか読者の皆さんはご存じであろうか? その人物は、あろうことか2001年から2006年まで、アメリカ合衆国の国防長官を務めたドナルド・ラムズフェルド氏である。そう聞くと、何故、今年になって急に、新型インフルエンザのパンデミックが起こったか、そして、また、何故、世界一公衆衛生が発達した日本において、かくも大勢が新型インフルエンザの犠牲となったのかという点について合点がいくであろう。

 

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