どんぐりころころと野田新政権

 11年08月29日



レルネット主幹 三宅善信  


▼ 両院議員総会での代表選は不幸中の幸い

  本日(2011年8月29日)開催された民主党両院議員総会で、民主党代表選挙の結果、野田佳彦議員が海江田万里議員を決選投票で破って、第9代民主党代表に選任された。ことここに至るまで、野党だけでなく、小沢派を中心に与党からも相当数の造反者が出て、可決必至と言われた菅直人総理に対する内閣不信任案決議の採決を控えて緊迫した6月2日の民主党代議士会で、人の良い鳩山由紀夫前総理が“悪党”菅直人総理に騙されて、「菅総理支持」を表明したことによって3カ月も延命してしまった菅直人総理にも、遂に政権を去る日が来た。

  ところが、ポスト菅を巡って民主党代表選に名乗りを上げた代議士連中ときたら、たまたま7名居たので、民主党サイドは「七人の侍」と恰好をつけたが、ある週刊誌では、この7名(前原・樽床・馬淵・鹿野・野田・海江田・小沢)の名前の頭を取って「また馬鹿のかお」と揶揄される始末で、東日本大震災の復興、原発事故問題、超円高等々、日本が抱える喫緊の課題が山積する中、ほとんど何もしなかった民主党政権に対する被災者や産業界の怒りが頂点に達している時の、実質上、「次の総理」を決める民主党代表選挙だっただけに、いろんな問題が顕在化した。そもそも、「平の大臣」にもなったことのない自薦他薦の議員まで含めて乱立気味であったが、告示日までに20名の「推薦人」を集めることができなかった樽床伸二議員と、海江田万里議員への「一本化」調整のため見送った小沢鋭仁議員が降りて、前原誠司、馬淵澄夫、海江田万里、野田佳彦、鹿野道彦の5人が、正式に代表選に立候補した。

  今回の代表選は、菅直人総理がギリギリまで退陣表明しなかったために、延長国会の会期末ギリギリになったので、告示から選挙まで三日間の超短期決戦で、また、菅直人代表の任期途中辞任の後任者を補填するというケースであったので、昨年9月14日に実施された菅直人議員と小沢一郎議員との間で戦われた、国会議員の1票X2ポイントと、郵便投票で行う全国の党所属地方議員の票を比例区毎に配分した合計100ポイントと全国の党員・サポーターの票を衆議院の300小選挙区に割り当てて各区1位総取り方式の300票の総合計で争われる正式の代表選挙ではなく、党所属の衆参両院議員だけの投票によって行われる方式の代表選であった。このことに対して、地方組織や一部のマスコミには批判的な声(註:特に、国民的人気の高い前原誠司議員の支持者)もあったが、私はかえって良かったと思っている。

  何故なら、民主党のこの代表選システムは、民主党が野党時代に規定した制度であるが、与党になった今日、民主党の代表が事実上の日本国首相に選任されるという、いわば「首相公選制」に近いシステムであるにもかかわらず、年間2,000円払えば、外国人でも民主党のサポーターになることができることから、在日外国人を囲い込んで数十億円の金を用意さえすれば、外国政府が日本の総理大臣を指名することができるというとんでもない制度のままであるからである。前原誠司議員が子供の頃から親しくしていた在日韓国人の焼き肉屋のおばちゃんから年5万円の政治献金を受けていた問題よりも、憲法違反の可能性すらある民主党の制度であるからである。もし、民主党がこのまま政権与党に留まりたいのであれば、早急に、党員・党友規定の「国籍条項」を導入することを望む。


▼ 内閣総理大臣は「日本国番頭」

  それにしても、今回の民主党代表選挙の候補5名を見ていると、こう言っては失礼だが、どの候補者も「ドングリの背比べ」で今ひとつ迫力に欠ける。こんなことでは、「生き馬の目を抜く」国際政治の場に出て行って、丁々発止と日本の国益を確保してくることができるような人物は居ない。あの厚顔無恥な菅直人首相ですら、外国人の前では「ええ顔」をしようとする。何故、日本人の前で見せるあの態度で中国をはじめとする覇権国家に望まないのか…? と思うのは私だけではないであろう。私なんか、国際会議でしぶとく外国人を攻撃する(先方の論理矛盾や言行不一致を突く)ものだから、「三宅の顔も見たくない」と思っている外国人が大勢居る。まあ「三宅さえ外せば、あとの日本人はカモ」と思っている連中の顔が目に浮かぶ…。そんな中で許せないのが、日本国内でヘゲモニーを取るため、外国人と組んで私の邪魔をする日本人のいることだ。

  そんな中で、今回の民主党代表選挙で、外国人から献金貰って悪いと思っていない前原誠司議員や、そもそもが中国シンパの上に、在日韓国・朝鮮人の経営者が多いパチンコ業界から献金を受けている海江田万里議員が選ばれずに、野田佳彦議員が代表に選出されたのは、まだ不幸中の幸いであった。野田議員は、代表選挙の第一回目のスピーチの中で「私は綺麗な金魚ではなくて、泥臭いドジョウです」と曰った。そのとおり。国王や大統領のように、国民の範として理想的な人間像を要求される国家元首ではない日本の総理大臣にとって、大事なのは優雅さや気品ではなく、泥臭いまでの実務家でなければならない。内閣総理大臣とは、いわば「日本国番頭」である。大平正芳(総理在任:1978年12月〜1980年6月)や竹下登(総理在任:1987年11月〜1989年6月)を見よ。「あ〜う〜」という口癖から「鈍牛」と言われた大平正芳は、戦後最も評価の高い宰相としてアメリカからも評価されているし、竹下登は、「言語明瞭・意味不明」と言われながら、消費税の導入やプラザ合意など、高度経済成長と遂げた後の日本社会が取り組まなければならない非常に難しい課題を克服させた。一方、そのまったく逆の「ええ恰好」だけをして、総理として何の実績も残せなかったのが細川護煕(総理在任:1993年8月〜1994年4月)や鳩山由紀夫(総理在任:2009年9月〜2010年6月)である。彼らはまさに「巧言令色少なし仁」の典型であった。

  その点、自ら「私は泥臭いドジョウですから直ぐに人気は出ないでしょう」と言った野田佳彦議員は、少なくとも総理大臣になる資質はあると言える。私個人的には、「泥ガメ」こと、亀井静香議員のほうが好みだが…。私はこの野田佳彦議員のスピーチを聴いていて、ひとつの童謡が頭の中に響いた。皆さんもご存知の童謡『どんぐりころころ』である。「ドングリの背比べ」のような代表選のスピーチでは、野田議員のスピーチが群を抜いていた。最後まで誰に投票するか決めていなかった民主党の議員たちは、彼のスピーチによって、「野田佳彦」と書いたのであろう。『どんぐりころころ』の歌詞は、「♪どんぐりころころ どんぶりこ。お池にはまって さあたいへん。ドジョウが出てきて こんにちは。ぼっちゃんいっしょに あそびましょ♪」である。


▼「私は泥臭いドジョウです」と言った時点で決した勝負

  まさに、菅政権末期のどツボにはまって身動きの取れない状況に陥った日本社会において実施された今回の民主党代表選挙は、まさに、山育ちのどんぐりが、転落の挙げ句に大震災・原発事故というどツボにはまって身動きの取れない状況を象徴している。原発事故を起こした東京電力の所轄庁である経産省の大臣であった海江田議員なんて、大津波による故事そのものと不可抗力であったとはいえ、その後の後手後手の処置がこれだけ被害を拡大させたのだから、代表選出馬どころか、責任取って「一回休み」のはずである。もちろん、日本外交の最高責任者外務大臣であった前原議員も、あろうことか外国人から政治金を貰っていたことが判明して「一回休み」のはずである。鹿野農水大臣も牛肉汚染問題や風評被害など酪農水産業者を保護できなかったのでアウト。馬淵議員なんか菅総理の震災・原発事故対応担当補佐官という時点で、無能をさらけ出していると思うのだが…。

  もちろん、菅内閣の閣僚であったという点では、野田財務大臣も同様であるが、他の候補者たちのような具体的な罪がない。そこで、ドジョウである野田議員のほうが、他のドングリたちよりも、一枚上手であるということになるのである。なにせ、「遊んでやる」ということは、遊ばれる者よりも遊んでやる者のほうが上でないと「遊んでやれ」ないからである。つまり、今回の代表選は、野田議員が「私は泥臭いドジョウです」と言った時点で、勝負が決していたのである。「私は泥臭いドジョウですから、綺麗な金魚のように直ぐには人気は出ないでしょう。ですから解散は当面しません」と、総理大臣の「伝家の宝刀である解散権」を自ら制限(実は、ふりをしただけ)してまで、一昨年の「政権交代ブームで当選しただけ」の一年生議員(=小沢チルドレン)たちの心を鷲掴みにしてしまったのである。今、解散総選挙をしたら、彼らの80%以上は間違いなく落選するであろうから…。

  ただし、今回の代表選では巧くいった野田佳彦“総理”の作戦が今後も巧く行くとは限らない。よほど、総理大臣(党代表も)の最大の権限である「人事権」を巧みに操らないと、今回、一杯血にまみれた小沢一郎議員たちが、与党だけでなく野党まで巻き込んだ政界再編を仕掛けてくるであろう。自民党の古株たちも、野党の冷や飯を2年間も食わされて、そろそろ禁断症状が出てきている頃なので、「大連立」は言うまでもなく、よほど巧みに乗り切らないと、今度は、『どんぐりころころ』の二番の歌詞のように、「♪どんぐりころころ よろこんで。 しばらくいっしょに あそんだが。 やっぱりお山がこいしいと。 泣いてはドジョウを こまらせた♪」ということになりかねない。こうして考えてみると、童謡『どんぐりころころ』は、実に奥の深い歌詞であると思うのは私だけであろうか…? よく考えてみると、今回の代表選によって、菅直人総理と小沢一郎元代表と鳩山由紀夫前首相という民主党結党以来の「トロイカ」三人組に揃って引導を渡すことができた岡田克也幹事長こそ、真の勝利者かも知れない。何しろ、童謡『どんぐりころころ』には、隠された三番の歌詞があって、そこではドングリをお山に帰してあげるという親切そうなリスが登場するそうである。隠されたメッセージは、ドングリはそのリスに食べられてしまうのだから…。

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