辺野古沖のサンゴを救う良策

13年12月28日



レルネット主幹 三宅善信

▼軍事的必然性と環境保護論

  2013年12月27日、沖縄県の仲井間知事がようやく米海兵隊普天間基地の移転先として、県央部の名護市辺野古のキャンプシュワブ沖に「V字」滑走路を造るための海面埋め立ての許可をした。人口の集積している県南部宜野湾市の市街地のど真ん中にあり、「世界一危険な基地」と呼ばれた普天間基地の移設をめぐって17年前に日米両政府間で合意がなされた「移転」がようやく現実のものとなる。在日米軍基地の70%が小さな沖縄県に集中していること自体、沖縄県民に大きな負担を負わせていることになっていることは事実である。必ずしも沖縄にある必要のない軍事施設は、ドンドンと本土に移転し、その負担を各都道府県で分担すれば良い――場合によっては、グアム島やフィリピン等の海外へ移転しても良い――と思うが、一方で、中国による領土侵略の危険性が現実味を帯びているかぎり、「即応戦力」としての米海兵隊の基地は、尖閣諸島などの「現場」から遠く離れた九州や本州にあるのでは、軍事的には意味がないから、どうしても沖縄県内に置いておく必要がある。

  これは、かつてソ連軍の侵攻に備えて多くの陸上自衛隊の戦車部隊が北海道に配置されていたのと同じ理屈である。逆に、米空軍の長距離爆撃機の基地である嘉手納なんかの機能は、国内最長の4000mと3500mの2本の滑走路を有しながら、いつもガラガラな関西空港へ「県外」移転してもまったく問題がないと思う。大阪湾岸の5km沖合を埋め立てて造った関西空港には騒音問題は一切なく、国内で唯一24時間運用ができる空港なので、長距離爆撃機の基地と併用するにはうってつけの空港だと思う。莫大な国費を投入して造成された関西空港島の建設コストを防衛費扱いにすれば、民間空港としての関西空港会社の利子負担も無くなって一石二鳥である。

辺野古沖のV字滑走路建設予定地にはサンゴがいっぱい…
辺野古沖のV字滑走路建設予定地にはサンゴがいっぱい…

  さて、普天間基地の「県内」移転先としての辺野古沖に反対する人々の何割かは、「基地問題」というよりは、辺野古沖の美しい珊瑚礁の海が埋め立てられてしまうことによってサンゴが死滅してしまうことを心配する、いわば「環境保護論者」の人々である。捕鯨からクジラを守るためには、人殺しさえ厭わないような連中までいるような環境保護論者の中には、軍事的必然性や経済的合理性など全く耳に入らない人が多い。とにかく「環境保護があらゆる課題に優先する」という一種の“宗教”のようなものである。実は、私は、それらの環境保護論者を沈黙させるために、辺野古沖のサンゴの移転先まで考えている。それは、日本最南端の島で「沖ノ鳥島」である。

▼沖ノ鳥島「生育」計画

  「絶海の孤島」である沖ノ鳥島を形成する「浅瀬」の面積は、2つの「島」に独立した平行滑走路を有する関西空港島のほぼ半分の約580haである。つまり、少し埋めたレルだけで、大型機が着陸できる滑走路を有する規模の「島」を造ることができる。因みに、もうひとつの「鳥島」である南鳥島には、長さ1,380mの滑走路が造成されており、少数ではあるが、海上自衛隊や気象庁の職員やアメリカ沿岸警備隊員が常駐している。しかし、海面上の陸地が「国際法上の島」と見なされるためには、満潮時にその一部が少しでも海面上に「顔」を出している必要がある。たとえ、干潮時に飛行が着陸できるくらい大きな干潟が出現したとしても、満潮時に水没するようでは、それは「陸地」とは見なされないのである。

ガチガチのコンクリートでかろうじて守られている「東小島」""
ガチガチのコンクリートでかろうじて守られている「東小島」

  因みに、沖ノ鳥島で、満潮時でも海面上の「顔」を出している陸地は2カ所しかなく、それも「北小島」と呼ばれる岩場がわずか16cmで、「東小島」にいたっては、わずか6cmである。どちらも、人間が2〜3人がよやく立つことができる「露岩」に過ぎない。太平洋戦争以前には、「島」の条件を満たす岩場が6つ存在していたのであるが、太平洋の荒波による浸食と地球温暖化の影響による海面上昇によって次々と失われ、現在では、かろうじてたった2カ所しか残っていない。もし、この2つの露岩が太平洋の荒波や何者かの破壊工作によって失われたら、沖ノ鳥島を起点にして半径200カイリで円を描く38万kuという日本の陸地の総面積にも匹敵する広大な排他的経済水域(EEZ)が失われることになるので、1988年以来、数百億円という巨額の予算を投入して、鋼鉄製の消波ブロックを設置し、「小島」の周りをコンクリートで固め、さらには、「小島」を傷つけないように、その上にチタン製の防護網までセットしているのである。

沖ノ鳥島を形成する珊瑚礁はかなり大きい
沖ノ鳥島を形成する珊瑚礁はかなり大きい

  ただし、これらの「人工物」は、いくら積み上げても「領土たる島」の根拠にはならない。何故なら、国際法上の「島」とは、最近、小笠原諸島の西之島の隣に、海底火山の噴火によって出現した新島のように、「自然に形成された陸地」でなければならないからである。だから、私は提案する。沖縄の辺野古沖に米海兵隊の「V字」滑走路を造成するために埋め立てる場所にあるサンゴをそっくり沖ノ鳥島まで運んで行き、沖ノ鳥島の水深数メートルの太陽光のよく届く浅い海底に「移植」するのである。やがて、そのサンゴは成長を開始し、中には太平洋の荒波によって折れたりするものも出てくるであろう。沖縄の真っ白な美しいビーチの「原料」は全て、サンゴが砕けた砂である。沖ノ鳥島でも、太平洋の荒波を抑制するセメント製のテトラポッドの配置をスパコンを使って複雑な潮流を計算して投入しておけば、潮流がほとんど発生しない水面ができるであろうから、何十年かの内にはそこに自然にサンゴ砂が堆積してゆき、やがて満潮時でも海面上に顔を現す美しいビーチとなるであろう。そこにしっかりと根を張るマングローブや椰子の木を植えれば、いっそう確固たる「陸地」になるであろう。そうすりゃ、誰にも文句を言わせない「立派な日本の島」になるであろう。

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