●一般教書演説
1月29日のブッシュ米大統領は、一般教書演説において、「テロとの戦いは始ったばかりだ」とテロ撲滅に向けての戦いを強調した。とくに北朝鮮、イラン、イラクの3か国については名指しして大量破壊兵器開発に警告を与えた。
「こうした国やテロリストが、世界の平和を脅かす悪の枢軸を形成している」と対決姿勢を鮮明に表明した。
米大統領というのは、米国の国益のみを考えているのであり、自国にとって脅威となる国をどのように糾弾しようと自由である。しかし、その精神構造の根底には、相手の立場になって物事を考えることができないという、人間としての根本的欠陥が横たわっていると言わざるを得ない。
このブッシュの発言に対して北朝鮮は反発を表明しているし、イランのハタミ大統領は次のように非難している。「戦争を挑発する内容で、最も悪い点は、イラン国民を侮辱したことだ」
ご存知のようにテロによる被害者が最も多い国は米国である。そのテロを撲滅するためにさらに武力と脅迫によって相手国を追い詰めていく。(もちろんその行動にはありとあらゆる“正義”が装飾されている。) 敵を自国の外に作り出し、徹底的に破壊しつくしていくのは米国が繰り返しているある種の病気である。
● インディアン・コンプレックス
以前も書いたが、その根源はアメリカ人のインディアン・コンプレックスに行き着くと思う。アメリカ人は建国にあたり、先住民であったインディアンを完膚なきまでに叩きのめした。
インディアンを完膚なきまでに叩きのめし、かつ、そのことを正当化したため、それ以後、いかなる敵と戦っても、敵の立場をいささかでも考慮に入れ、敵の正当性をいささかでも認め、完膚なきまでに叩きのめす手前で中止したとしたら、かつてインディアンを完膚なきまでに叩きのめしたのは果たして正しかったのか、そこまでやる必要はあったのか、などと深刻な自己疑惑に陥らざるを得ない。それが恐ろしいのでアメリカ人は、戦争となると、敵を完全に屈服させることを前提とせざるを得ないのではないか。
それこそ、宇宙人が原爆に匹敵するような破壊力でもって、アメリカを叩き潰すというような出来事でも起きない限り、アメリカのこの病気は永遠に繰り返されるだろう。
● 20世紀を代表する100大ニュース
1999年の暮れに、アメリカのメディア博物館「Newseum」が「20世紀におこった100大ニュース」というアンケート結果を発表した。その第一位がなんと「ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下」なのである。その理由は「これによって日本が降伏し、第二次世界大戦が終結した」となっている。
主だったニュースを並べてみよう。
1位 米国はヒロシマ、ナガサキに原爆を投下、日本が降伏し、第2次世界大戦が終結。1945
2位 米宇宙飛行士、N.アームストロングが月面着陸 1969
3位 日本がパールハーバーを奇襲。米国は第2次世界大戦に参戦。1941
4位 ライト兄弟が最初の動力飛行機で飛行。1903
5位 女性、参政権を獲得。1920
6位 ジョン・F・ケネディー大統領、ダラスで暗殺される。1963
アメリカ人が選んだ100大ニュースに日本がらみが1位と3位に入ってるなどと安易に考えてはいけない。少なくともアメリカ人の知識人、ジャーナリストは「われわれは人類史上最も残虐な兵器を使って、大量殺戮をやってしまった」といような自虐的な思いで、ヒロシマを選んだのではない。
自虐史観ではなく、「ヒロシマ」にアポロ11号より大きな意義を感じ、あるいは誇らしい思いをもってこれを選んだはずである。
まず20世紀の始った1901年世界地図を見てみよう。世界史を思い出せば、このとき全世界は白人国家によってほとんど分割され、植民地されていたのがわかる。アジアでは、植民地化されていないのは、中国(清)、日本、朝鮮半島ぐらいであった。
その後、日露戦争勝利という黄色人種による快挙がおこる。第2次大戦初期においては、日本はホンコン、マレー半島、シンガポール、インドネシア等を占領した。一時的にせよ、白人が大事な財産としてきた植民地からたたき出され、なおかつ、白人こそ最優秀だという彼らの勝手な思い込み、プライドまで粉々にされたのである。それも見劣りのする足曲がりの臭いサル(日本人)に降伏してである。
1945年8月、ヒロシマとナガサキに原爆は投下され、日本にアメリカは勝った。それも原爆という白人の英知の結晶をもって打ち勝ったのである。アメリカは他の白人国家の協力をえることなく、再び白人キリスト教国家による世界支配の道を歩みだせるようになったのである。
それを象徴するものは何か。アポロ11号ではない。白人が最も優秀で強いという伝説を復活させたのは原爆なのだ。それゆえ全米のジャーナリスト、知識人は、20世紀最大の事件としてヒロシマを選んだのである。
広島原爆資料館の感想ノートに、あるアメリカ人はつぎのように殴り書きしたという。「You deserved it (ざまあみろ、自業自得だ)」
さて、一般教書演説直後のブッシュ大統領の支持率は80%を超えているという。
■ 参考文献■
「日本がアメリカを赦す日」 岸田 秀 毎日新聞社
「情報鎖国・日本 −新聞の犯罪」 高山正之 廣済堂出版