▼だれか、この責任は取ってもらえるのですか?
「自己責任」論の応酬が喧しい。聞いているだけで、疲れますよね。ちょっと違う所から入りますが、河原に捨てられたゴミとか、駅周辺の空き缶などとかを拾い集めてきれいにするボランティア活動をどう思います? その行動自体はとても良いことだと思います。でも、これってちょっとヘン。どうしてボランティアの人たちがしているのでしょう。本来なら、自治体の仕事でしょう。多分、十分な予算がないのでしょうね。
後で必ず問題になることを、つまりは自治体などにさせればがお金(税金ですよ!)がかかってしまうことを、一人ひとりが後のことを考えず、また結局自分がその費用を負担することになることを想像できずに、ゴミを捨てている。空き缶をきちんと指定のゴミ箱に捨てていれば無用な労力や税金を、そのために浪費している。尻拭いは、ボランティアの人たちによる無償の労力か、自治体による有償の清掃作業。そして、次にはそのための増税。この無限に悪循環する大いなるムダをどう思います?
誤解のないように言っておきますが、今回の人質となった人たちの行動を言っているのではありません。そうではなくて、今回の事件をめぐっての国論というか、マスコミと国民を大いに賑やかす議論(?)についての精神的蕩尽、いや浪費について言っているのです。内容を曖昧なままにした「自己責任」論の「不法投棄」がそうですね。この精神の浪費を何とも思わないわがニッポンは、病理の国と言わざるを得ません。ああ、精神が過労死しそう。
▼「PSTD」の発症原因は何かを知りたい
話はますます外れるのかも知れないけど、無事解放された人質の人たちの様子って、明らかにヘンですよね。特に高遠菜穂子さん。イラクでの解放直後の映像――犯人集団から身柄を承けた聖職者協会のクベイシ師も映っている映像――では、泣いたりもしていたけど、一方ではのん気にガムか何かを口の中でクチャクチャしながら話していたのが印象的でした。何か肩すかしをくったような気すらして。
それが関空に着いた途端に一変! まあ、その間がないので、いつからそうなったのかは不明なのだけど。関空や千歳の自宅に入る際に撮られた映像でのおじぎの仕方は絶対に異常です。「PSTD」と認めます、ただし「解放後」のね。人質だった期間ではなく、解放後にこそ相当なショックとなる事態があったと推測できます。政府や警察公安の事情聴取、そしてイラクに駆けつけた家族と弁護士との話し合いこそが原因でしょう。
自己責任というより未成年者に対する保護者の責任はどうなのかと言わざるを得ない今井紀明さんの場合はちょっとヒドイ。イラク入国も解放後の判断も息子の意思に任すと言い続けてきた父親は、本人の帰国後はひたすら「あるべき日本の親」を演じた。それに、イラクでそれまで人質救出に身命を賭し、日本国を代表して身請けに現われた上村臨時代理大使が初対面で万感をこめて「今井さんですね」と聞くと、それに対して本人は愛想もなくただ「ハイ」と答えた。それだけ。お礼の一言もない。大変良い家庭教育を教師である父親から受けてきたことを如実に物語るエピソードでしょう。その彼も「PSTD」だとか。親の説得(?)が実ったのか、帰国後はひたすら沈黙です。
▼後の二人はどうして元気なの?
北海道の二人と対照的に南の宮崎に帰郷したもう一人の郡山総一郎さんは比較的に元気そうに見える。少なくともPSTDとは見えなかった。が、記者会見などの単独行動はまずいのだろう(だれにとって何がどうまずいのかが問題だけど)。ところが、この郡山さんよりも、遙かに元気な人たちがいる! 後で人質となり解放された安田純平さん(ちなみにこの方は「人間の盾」もされていた)、渡辺修孝さんのコンビだ。二人は記者会見、そしてテレビインタビューすら堂々とこなしている。
後発の二人組がただタフなだけなのだろうか。それでは説明にならない。三人と二人の違いを考えよう。三人の時の決定的なことは、家族たちと弁護士たち(組織され「イラク人質事件被害者家族代理人」と名乗る)が事件判明直後から、北朝鮮拉致被害者家族会のような記者会見を行ない、たとえ自衛隊を撤退させても人質となった家族を救い出してほしいとテレビその他を通じて国民に訴え、政府にプレッシャーをかけたことだろう。
前号でも書いたけど、日本人の多くは家族の一連の言動に何か違和感を抱いただろう。確かに人質になったことはかわいそうで何とか助けてあげたいけど、でもそれだけ? 自分の家族の行動は一切問わず、こうなったのはわが日本政府がアメリカの「イラク侵略」に加担し自衛隊を派遣したせいだって言うの? それって逆ギレ、責任転嫁じゃん!と。そこで出てきた言葉が「あんたたち(自己)の責任はどうよ?」だった。それだけ。
▼自己責任じゃなくて、責任転嫁が問題じゃないの?
本当に自己責任だと言うなら、警告を無視して人質となった人を救い出すこともないよね。でも、税金を使って政府は努力して、計5人を助けたよね。政府の義務だから当然だという人もいる。それはそうだけど、要は自分たちでできる範囲ではきちんとやってよね、ということだろう。政府が言う自己責任っていうのは。でも「反対派」の人たちは違う。三人は少しも悪くない。だから、自己責任だと言うこと自体がおかしいと、ためらいもなく断言するのだ。
問題がおかしくなった責任は、あのようなやり方と内容でマスコミに訴え続けた家族たちと弁護士たち、それにそれをたれ流したマスコミにあることは明白だ。後の二人との決定的な違いがそこにある。遭難し救出された関学ワンダーフォーゲル部の「自己責任」も、自分たちの領分でのそれが問われたのだ。無事救出できるとは限らないからだ。国民の心証の分かれ道は「責任転嫁」したかどうかにあったのだ。
人質となっていた三人がどう考えていたかわからないが――解放直後の映像からだいたいの察しはつく。まさかこの映像まで日本へ配信されているとはつゆと思っていなかった。ましてや自分たちの家族が連日テレビに出演し、日本はおろか世界に自分たちの救出を自衛隊撤退と引き替えに訴え続けているとは――、家族たち(と弁護士たち)は自分たちの世論操作「戦略」の誤りにいつか気づいたようだ(実際、問題は「責任転嫁」論にあり、ただ救出の懇願であれば何の問題もなかった。ここに精神の浪費の始まりがある)。
▼精神とお金の浪費。もうどうしようもないね
高遠さんは「早く帰りたいけど千歳に帰るのが怖い」と話した、という。何がそんなに「怖い」のだろう。イラクに迎えにいった家族と弁護士は、おそらく日本の新聞とファックス、メールなどの山を抱えていき、それを何の思慮もなく本人にあけすけに見せたのだろう。もし「窮地に陥り、追い詰められている」と感じたのなら、それは誤解だ。「窮地に陥り、追い詰められている」と感じたのは、家族と弁護士である。自分たちの不安をまたしても「責任転嫁」するように本人に伝えたとしか思えない。高遠さんの様子を見ていると。これも、政府や心ない国民のせいに責任転嫁するのだろうが。家族と弁護士の自己責任こそ、強く問われなければならない。
以上のような日本的文脈を踏まえず、天の助けと、「仇」であるはずのパウエル米国務長官の「自己責任」論を自分たちの都合のよい側面だけで引用したり(彼の真意は日本の自衛隊派遣の意義の訴えにある)、日本人の大半が未だに理解できない「自己」概念を生んだ国、西欧フランスのルモンド紙の「自己責任」という言葉だけで書かれた論評――当然、日本国内の文脈を理解できていない――を引いたりするのは、子どものケンカに親を引っ張り出すに等しいね。
それにしても、やっぱりアルジャジーラっておかしい。日本人人質の解放に二度とも同席して取材・放映している。三人の時など、目隠しをとるところから始まっているってのは演出だよね。あいつらはニュースをドラマにしているんだ。そしてそのアルジャジーラを招き寄せたのは聖職者協会であり、例のクベイシ師っていう「香具師」だ。独占放映権にいくらかかったのだろうね(当然それは彼らの懐に入る)。その費用は回り回って、私たち日本人が税金として納めたものから支払われたことはまず間違いない。
(おまけ)
北朝鮮が「燃えている」! 人質事件のために大きな話題とされなかったニュースに韓国の総選挙があった。ご存知の通り、盧武鉉大統領が信任された結果となった。その後、金正日総書記が中国へ「非公式」(?)訪問した。帰国直後、北朝鮮で列車爆発事故が起こった。実はそれだけではない。朝鮮半島東部で突如山火事が多発している。とても偶然の一致とは思えない。総書記不在時をねらった「反政府」活動と思われる。北朝鮮で何かが実行されつつある。しかし、中国の基本姿勢、韓国の親北政策は明らかにこの流れに反するものだ。わが日本はどうする? と言っても初めからカヤの外だけどもね。