6月27日から29日まで、大阪市と京都市の各会場において、G8宗教指導者サミットが『地球に生きる――宗教者からの提言』をテーマに開催され、33カ国から200名を超える各宗教の代表が一堂に会し、現代世界の抱える様々な問題について相互理解を深めた。なお、人類共栄会の三宅光雄会長は、G8宗教指導者サミットの運営委員長として、この会議を成功に導いた。
開会宣言をする三宅光雄G8運営委員長
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人類共栄会では、昨年6月から丸一年間、日本で開催されるG8宗教指導者サミット2008の準備に全面協力してきた。昨年12月14日に開催された第1回運営委員会で、三宅光雄会長が運営委員長に選出されたのをはじめ、三宅善信理事が、当初から事務局長として中心的に関わってきた。
6月27日午前、大阪大学中之島センターを会場に開会式が行われた。開会式が始まる前に既に立ち見まで出た満席状態であった。四天王寺楽所雅亮会による舞楽『蘭陵王』の上演に続いて、三宅光雄運営委員長が開会宣言。G8宗教指導者サミット(以下、役職時にはG8と略記)会長の出口順得和宗総本山四天王寺管長の開会挨拶、橋下徹大阪府知事の歓迎挨拶、G8名誉顧問のノロドム・シリブド殿下(カンボジア王国)による祝辞、さらには、G8相談役のM・ロビンソン前アイルランド共和国大統領と、エジプト共和国イスラム教最高指導者のアリ・ゴマ師、バチカン諸宗教対話評議会議長のJ・トゥーラン枢機卿、高村正彦外務大臣らの名代が祝辞を述べた。
橋本徹大阪府知事の歓迎挨拶 |
引き続き開催された全体会議1では、今回のサミットの三つの分科会を代表する2名ずつの識者(日本・モンゴル・アメリカ・チベット・セネガル・エジプト各国)から、それぞれ基調講演が行われた。
「あいりん地区」を現地視察
この後、日本最古の仏教寺院である四天王寺と、日本一多くの日雇い労働者が集まる西成区の「あいりん地区」を訪れ、あいりん労働公共職業安定所を皮切りに、宗教団体やNPOが現地で行っているシェルター(避難所)やシャワー施設、簡易宿泊施設等あいりん地区内の多様な施設を訪問し、これらの運用実態について報告を受けると共に、いろいろと質問を行った。本プログラムは、“経済大国”日本における社会の歪みの部分について学ぶ上で大変有意義であった。
あいりん地区を視察する参加者たち
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さらに、住吉大社・念法眞教・泉尾教会の三カ所に分かれて、本サミットの三つの分科会、すなわち、分科会A『自然と生きる』(モデレータは安田喜憲国際日本文化研究センター教授)、分科会B『民族と生きる』(モデレータは町田宗鳳広島大学環境平和学プロジェクト研究センター所長)、分科会C『アフリカと生きる』(モデレータは井上昭夫国連UNITAR特別上級顧問)がそれぞれ開催され、おのおの数名ずつのパネリストが日頃の活動の報告や、意見の発表を行った。
特に、泉尾教会で開催された分科会Cでは、三宅光雄教会長の歓迎の挨拶に続いて、キャサリン・マーシャル世界銀行総裁顧問、T・ランケスター・コーパスカレッジ学長、R・ディオフ・セネガル共和国大統領顧問、M・マタタ・オリエンス宗教研究所長、和崎春日名古屋大学大学院教授、A・ムブル駐日ケニア大使館参事官らがアフリカの抱える数々の「困難な問題」を、「可能性として捉えるべきである」という主旨で話し合った。
泉尾教会で開催された分科会C
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フードマイレージを減らす義務
6月28日は、大阪から京都への移動時間を利用して、世界遺産である奈良市の東大寺と京都市の清水寺を視察し、上野道善華厳宗管長と大西真興北法相宗大本山清水寺執事長らから歓迎の挨拶を受けた。
午後は、京都でのメイン会場である同志社新島会館において、全体会議2が開催され、三宅善信事務局長による趣旨説明と西村冏紹天台眞盛宗管長による『フードマイレージについて』と題する基調講演が行われた。同講演によると、「現在の日本人は、『フードマイレージ(食糧の重量×生産地から消費地への移動距離)』という観点からすると、歴史上のどんな王侯貴族よりも贅沢な暮らしをしている」と厳しく指摘し、生活のあり方の変革を迫った。
続いて、三つの分科会のモデレータから、初日の討議の報告と二日目の討議の方向性について報告された。また、W・アブドルナセル駐日エジプト大使が、この宗教指導者サミットの提言を実際にG8首脳会議に受け入れてもらうために、どのような点に留意して提言文を作成すべきかについて述べた。
さらに、新島会館の各部屋に分かれて、前日同様、三つの分科会毎に会合が持たれ、各国からの参加者から意見発表や活動報告がなされた。特に、民族問題を採りあげた分科会Bでは、「チベットやミャンマーや北朝鮮などの人権に対する過酷な状況を宗教者は看過すべきではないとの観点から、首脳会議に対して強力に主張していくべきである」とする立場と、「いくら威勢の良い宣言文を作成しても、実際に首脳会議に宗教者の主張を受け入れてもらうためには、それなりの工夫が要る」との立場の違いから激しいディスカッションが展開された。
社会に開かれた宗教サミットを
6月29日の午前中は、上賀茂神社と西本願寺と佛光寺に分かれて三つの分科会を開催した。今回のG8宗教指導者サミットの目的のひとつは「現代世界に惹起する様々な問題について、宗教界だけでなく、国連や各種の国際機関、各国政府とも連携を深める」ということであったが、同時に、そのことが、一般市民やマスコミに対しても開かれたものであることが求められていたので、大勢の観光客が参観するこれらの伝統的施設でサミットのプログラムが実施されたことの意味は大きい。
激しい討論が行われた全体会議3
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午後に、再度、新島会館に集まり、最後の全体会議3が行われた。まず、米国の議会に多大な影響力を保持するユダヤ教改革派のD・サパースタイン師が三日間のサミットの議論を総括する講演を行った後、G8宗教指導者サミット諮問委員のM・マタタ・オリエンス宗教研究所長の議長に、同じく諮問委員のM・パイ・マールブルク大学名誉教授の報告によって、提言文案の審議と修正作業が行われ、チベット問題等に対する激しい討論の結果、G8首脳会議に対する宗教界からの『提言文』が採択された。
総理官邸で『提言文』を手渡す
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最後に、閉会式が行われ、地元京都を代表して、門川大作京都市長がお礼の挨拶を行い、G8会長の出口順得和宗総本山四天王寺管長、名誉顧問のノロドム・シリブド殿下の挨拶と、G8顧問の西田多戈止一燈園当番による『地球感謝の鐘』の鉦打と三宅光雄運営委員長による閉会宣言で三日間にわたるG8宗教指導者サミットは無事、閉幕した。
なお、引き続き、三宅善信事務局長を中心に、G8諮問委員の先生方が記者会見に参加し、今回のG8宗教指導者サミットの成果と今後の課題について総括すると共に、翌6月30日には、三宅事務局長とマタタ所長が総理大臣官邸を訪れ、大野松茂内閣官房副長官に『提言書』を手渡した。