国際宗教同志会 2020年度第3回例会 記念講演

自衛隊のコロナウイルス感染症への対応について

陸上自衛隊 中部方面総監部幕僚副長
安井寛

2020年10月7日、神徳館国際会議場において、国際宗教同志会(芳村正德会長)の2020年度第3回例会が、ソーシャル・ディスタンスを十分確保しつつ開催された。記念講演では、陸上自衛隊中部方面総監部幕僚副長の安井寛陸将補を招き、『自衛隊のコロナウイルス感染症への対応について』と題する講演と質疑応答を行った。本サイトでは、この内容を数回に分けて紹介する。

中部方面隊の概要

安井寛氏
安井寛 氏

ただ今ご紹介にあずかりました、陸上自衛隊の中部方面総監部で幕僚副長をしております安井と申します。本日はこのような場にお招きいただき、講演の機会を頂けましたこと、大変感謝しております。本来ならば中部方面総監の野澤真陸将がこちらに伺うべきところでございますが、本日はあいにく他用が入っており、現在広島に向かっているところだと思います。役不足と思いますが、代わって私が本日の講師を務めさせていただきます。

本日の講題は『自衛隊のコロナウイルス感染症への対応について』ですが、われわれ自衛隊がこれまでやってきたことや、何故、自衛隊が効果的に対応できたかということも含めてご紹介したいと思います。併せて一般的な自衛隊の活動も紹介させていただきたいと思います。最後まで聞いていただければ幸いです。ただ、一介の自衛官でございますので、あまり高尚なお話ができず業務的な内容となりますが、その辺はご容赦いただければと思います。

座席間隔を確保して開催された国際宗教同志会2020年度第3回例会
座席間隔を確保して開催された国際宗教同志会2020年度第3回例会

少しご紹介いただきましたが、私の現職は中部方面総監部という、この地域を担当する陸上自衛隊の部隊の司令部にあたるところで、防衛担当の幕僚ということで、参謀部長のような仕事をしております。幕僚副長は、会社でいうところの常務のような仕事で、社長に相当する方面総監の仕事の補佐や、各部長の業務指導にあたっております。今はこのような仕事をしておりますが、先ほどご紹介いただきましたように、元々はヘリコプターのパイロットでした。写真一番左のヘリは、4人乗りの軽自動車のようなヘリで、真ん中が10人ぐらい乗れるバンのようなものです。一番右は55人ぐらい乗れるバスぐらいの大きなヘリコプターです。これまでパイロットおよび指揮官を務めてまいりました。陸上自衛隊には1988年に入隊し、ここから程近い八尾駐屯地から自衛官としてのキャリアをスタートさせました。自衛隊は非常に人使いの荒い組織で、現在のポストがちょうど20個目にあたります。因みに、これまで16回引っ越しをしました。今、55歳で、元々は山口県の出身です。これまでたくさん引っ越ししてきましたので、5年前から単身赴任で妻を埼玉県の朝霞に残してきております。娘が1人居りますが、転校ばかりで小学校が4つと中学校2つに通いましたが、グレずに育ってくれました。独立ひとりだちして今は神奈川県川崎市に住んで会社員をしております。

次に本日の講演内容ですが、まず導入として、この地区を担当している中部方面隊がどのような部隊かについて紹介させていただきます。2番目が「自衛隊の任務とは」です。さまざまな任務がありますが、われわれがどのような考え方で任務に臨んでいるか紹介させていただきます。続いて本題であります「自衛隊の新型ウイルスへの対応」ですが、その特性と、先ほど申し上げました何故自衛隊が有効に活動できたかを最初に紹介させていただいて、その後、具体的にどのような取り組みを行ってきたか説明させていただきます。また、自衛隊はコロナウイルス対策だけではなく、このコロナ禍においても任務を継続しておりますので、そういったことも含めてここで触れたいと思います。最後に、自衛隊における慰霊や追悼等についても少し触れたいと思います。

陸自全国5方面隊
陸自全国5方面隊

まず、中部方面隊の概要でございます。陸上自衛隊にある5つの方面隊のうちのひとつで、東海、北陸、近畿、中国、四国を担当しております。この地域の防衛の他、担当地域で発生する災害に対応すると共に、他の方面隊で発生した災害や、世界の国々で発生する紛争解決のための国際協力活動に増援部隊を派遣することが、われわれの仕事となっております。中部方面隊の担当地域は非常に広く、全国面積の29%に相当します。都道府県の約45%、2府19県を担当しております。人口は日本全体の37%が中部方面隊の担当地域に所在しております。先ほど少し触れられましたが、北海道は北部方面隊、東北は東北方面隊、関東甲信越は東部方面隊、それから九州は西部方面隊となっております。昔はロシア、対ソ連ということで北海道が正面でしたが、今はだんだん西へ、西へということで、西部方面隊正面が熱くなってきているというところです。数年前に陸上総隊という、これら方面隊を統括する司令部が朝霞に創設されました。

方面隊は4つの警備区域に区分されます。東海・北陸地区は第10師団、近畿地区は第3師団、中国地区は第13旅団、四国は第14旅団が担当しております。それぞれ司令部が、愛知県名古屋市の守山駐屯地、兵庫県伊丹市の千僧駐屯地、広島県安芸郡の海田市駐屯地、香川県善通寺市の善通寺駐屯地に置かれています。方面隊全体では二万数千人の隊員が所属しており、区域内にある37個の駐屯地等に駐屯して勤務しております。以上が中部方面隊の概要ですけれども、続きまして自衛隊任務の考え方についてお話したいと思います。

陸自中部方面隊詳細
陸自中部方面隊詳細

自衛隊任務については、大きくは主たる任務と従たる任務に区分されます。スライドはそれをイメージしたものですが、主たる任務とは、図の中心に書かれています「わが国の防衛」であり、わが国の平和と独立、そして国民の安全、安心を、主に海外の敵から守ることであります。自衛隊の任務の中核となるものであります。この主たる任務の遂行に支障を与えない程度で、従たる任務、すなわち災害派遣活動や国際平和協力活動を実施いたします。これは、わが国の防衛のために自衛隊が保有している能力をこれらの活動にも適応できるため、ある一定の条件の下でこれらの活動を実施します。例えば災害派遣については、三要件(公共性、緊急性、非代替性)というものがあります。つまり公共のためになるかということ、それから急いでやらなければならないかということ、それから自衛隊でなければ対応できない仕事であるかどうかということであります。因みに今回お話しします新型コロナウイルス感染症の対応任務のほとんどは、災害派遣の枠組みで実施しています。そのため、コロナ禍においても、やはり自衛隊の主な任務はわが国の防衛でありますので継続して行っております。本日はそういったこともお話しさせていただきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症対応任務の特性と自衛隊の有効性

続きまして、本題であります自衛隊の新型コロナウイルス感染症への対応について説明したいと思います。まず、何故自衛隊が派遣されたのか。そして何故有効に任務をできたかについて。続いて、自衛隊が実施した活動について、その全体像を説明いたします。同じようなガウン(防護服)を着た人の写真が続きますので、少し退屈かもしれません。そのため途中で少し趣向を変えたビデオ等も交えながらご覧いただこうと思います。この項目の最後に自衛隊が任務を継続してきたことを紹介させていただこうと思います。

まず、新型コロナウイルス感染症の特性と、自衛隊の有効性について説明したいと思います。今般の新型コロナウイルス感染症の対応任務の特性は、全国規模で災害派遣が実施された自衛隊初のオペレーションとなりました。東日本大震災の対応でさえも、主な活動地域は東北と関東の一部地域でしたが、今回はほぼ全国にわたって自衛隊が活動しております。見えない脅威に対して「危ないものは自衛隊にやらせろ」という考えがあるみたいですので、当初は自衛隊が対応しましたが、だいたいできることが判ってきた段階で民間事業者に適切に活動を移管しております。これは先ほど申し上げた緊急性や非代替性との関係で、だいたい1週間から2週間に期限を区切って実施したものであります。

続きまして、今回の新型コロナウイルス感染症の多くの部分は、基本的には地方自治体が担当しております。ここ大阪でも吉村洋文知事が頑張っておられましたけれど、各都道府県庁との緊密な連携が必要となっております。そして自衛隊が保有するハード・ソフトの能力を活用し、任務遂行中の感染者ゼロで、まだまだ任務継続中であります。先ほど紹介いただいた内容の中で、自衛隊は生物兵器にも対応できるとありましたが、そういったところも、われわれのひとつの助けとなったところであります。

(連載つづく 文責編集部)