日本における宗教の概要

◆◆神職1人あたりの信者数および布教施設1カ所あたりの教師数の分析◆◆


神社神道系


わが国の全宗教団体(法人・非法人を含む)23万件のうち、約3分の1を占める神社本庁を擁する最大の宗教団体。神社本庁から提出された数字によると、日本国民の約8割が信者(神社界の用語によると「氏子・崇敬者」)というのは、論理的な数字としては理解しがたい。 
これは、全国の神社が、初詣に参拝した人々(明治神宮のように正月三が日だけで350万人も参詣者のある神社もある)や、あるいは、その地域の住民の数を全て「氏子」として計算した数字の累積と考えられるので、当てにならない数字であろう。


教師(神職)1人あたりの信者数も4,450人となり、これでは、崇敬者の顔も覚えられまい。ただ、伝統仏教各宗派や新宗教各教団のような比率で「お布施」が入るわけではないことも、このデータは示している。もし、それらと同じ割合で、収入があるのなら、神職の平均年収は2億円を超えることになり、神職希望者が殺到するに違いないが、現実には、全宗教の中で唯一、布教施設(神社)の数の方が教師の数よりも遥かに多い(約4倍)ことからも、そんなに「なりたい職業」でないことは明白である。 

逆に、わが国の全宗教家の平均的年収の数字を尊重すると、国民の平均的な神社へのお供え(初穂料・玉串料・賽銭等)は、2,000円ということになる。こちらの方の数字の方が、より蓋然性が高いことは明らかで、神社は「広く薄く」という集金体系を確立していることを裏付けている。むしろ、問題なのは、布教施設(神社)1カ所あたりの教師(神職)数が、0.27と他宗教と比べても飛び抜けて低いことである。これは、平均して1人の神職が4つの神社の宮司を兼任しているということであり、宗教行為が継続的に行われているとは言い難く、宗教法人法のいう「宗教法人の基準」を満たしていないとも言える。もちろん、神社本庁は政治的には大きな圧力団体であり、また、神社は全国津々浦々に存在し、長い伝統を有しているので、これが「宗教法人でなくなる」ということは考えられない。むしろ、神社界を取り巻く最大の危機は、後継者不足であろう。現在でも、1人の神職が4つの神社の宮司を兼ねなければならないのに、人類史上稀にみる「少子化」社会となったわが国の社会状況が、主に「世襲制度」を基盤にしている神社界を直撃することは、火を見るより明らかである。

1人の女性が生涯に産む子供の数が、1.5人を下回っている現在、もし、多くの神社で行っているような「男子の長子が跡を継ぐ」という方式に固執するなら、神社関係の嫡男は、1.5x0.5=0.75人ということになり、急速に後継者不足に陥るであろう。この数字に1神社あたりの神職数0.27を掛けると、0.20となり、物理的に神社が存続できない壊滅的な数字なってしまう。娘しかいない神社が婿養子を求めるなら、この条件は更に2倍悪化することになる。古来より、神道では「産巣日(むすび=生殖をはじめとして、事物を産み出すこと)」という概念を大切にしてきたが、今、まさに神社界にとって最も必要なキーワードは「生殖の礼賛」ということが言えるであろう。

神社本庁以外の神社神道系の教団では、木曽御嶽本教の教師1人あたりの信者数17.5人は、神社本庁のそれと著しい対立を見せている特徴と言えよう。これではもちろん、教師は「食っていく」ことができない。この数字は、むしろ木曽御嶽本教が「皆布教者型」(天理教や真如苑の項目で詳しく説明する)であることを示している。また、石鎚本教の教師1人あたりの信者数329人は、伝統仏教各派に典型的に見られる「檀家型」とよく似ている。

このように、各宗教団体を比較するとき、これまで長年にわたって行われてきた「教義的なエレメント」による分類(本ホームページにおいても、読者の馴染み易さや文化庁のデータとの整合性からも、一応、その分類方法を踏襲しているが)よりも、社会的存在としての各教団の実態に注目した方が、ある時には、その教団の実態を適切に捉えているといえるのではないか。




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