2007年9月26日から30日の日程で、国際宗教同志会は創設60周年記念事業の一環として「ダライ・ラマ法王訪問団」8名(団長:三宅善信事務局長)を派遣。チベット難民亡命政府ダラムサラにおいて、ダライ・ラマ14世法王と会見した。折からミャンマーで起きた軍事政権の民主化要求デモを行った仏教僧への発砲事件に対するダライ・ラマ法王と国際宗教同志会の共同声明を発表するなど、大きな成果を挙げた。
ダライ・ラマ14世との会見を終えて
チベット難民亡命政府のあるインド北西部ヒマラヤ山麓の町ダラムサラまでは、最寄りの国際空港であるパンジャーブ州のアムリトサルから片道6時間以上の悪路を行かねばならないため、9月26日に関西空港を発って30日に帰国する道中のほとんどが「移動日」という強行日程であった。
シーク教総本山「黄金寺院」に参詣した国宗代表団
パキスタン国境に近いアムリトサル空港からインド入りした後、同市内にあるシーク教の総本山ハリマンディル・サーヒブ(黄金寺院)に参詣後、バスをチャーターして長駆ダラムサラへ移動し、27日の日没前やっと到着。関空を発って既に36時間が経過していたが、直ちに、チベット亡命政府のツェリン・プンツォク宗教・文化大臣主催の夕食会に招かれ、2時間以上にわたって、同大臣から亡命政府の歴史と民主化のプロセスについて説明を受けた。
ツェリン・プンツォク宗教・文化大臣主催の夕食会
28日午前、チベット難民受け入れセンターを訪問。現在でも、中国政府の苛烈な抑圧を逃れるために急峻なヒマラヤ山脈を越えて流入し続ける難民の悲惨な実態について視察した後、午後、ダライ・ラマ14世法王に会見。この前日、遂に犠牲者まで出たミャンマーでの仏教僧と軍事政権との衝突や、数日前にドイツの首相府で行われたアンゲラ・メルケル首相との会談の中身、中国政府の手によって10年以上にわたって「行方不明」になっているパンチェンラマの話など、75分間にわたる率直な意見交換を行った。
ダライ・ラマ14世と諸問題について75分間にわたって話し合いが持たれた
また、三宅光雄理事長が運営委員長になって2008年6月下旬に関西で開催される予定の「G8宗教指導者サミット」に関しては、ダライ・ラマ法王が「全面的に支持する」旨の表明を受けた。そして、国際宗教同志会とダライ・ラマ14世が共同して『ビルマ軍事政権の暴力行為を非難する共同声明』を発することになった。
ダライ・ラマ14世との会見後、チベット寺院で非暴力と世界平和を祈る
会談終了後、国際宗教同志会代表団一行は、千僧読経が行われている中央本堂に参詣して、チベット仏教僧たちと一緒に、ミャンマーでの事態の平和裡な解決と世界平和と祈った。また、同日夕方には、折から開会中のチベット亡命政府の国会を傍聴。政府施設である美術館・図書館でチベット仏教に関する歴史的文物を見学した。翌早朝にダラムサラを出発し、また陸路アムリトサルへ移動。空路デリー、シンガポール経由で帰国の途に就いた。
チベット亡命政権の国会を視察
2007年10月2日、金光教泉尾教会神徳館小会議室で開催された大阪国際宗教同志会平成19年度第3回理事会において、十年来の懸案であった京都国際宗教同志会の大阪国際宗教同志会への合流が審議され、満場一致で承認された。
京都国際宗教同志会の大阪への合流を決議した理事会
この日の理事会には、京都国際宗教同志会事務局長の西田多戈止一燈園当番がオブザーバー参加し、「1947年の国際宗教同志会発足当時から、戦後の混乱期にもかかわらず、日本最初の諸宗教対話組織として、希有な働きをしたこと。また、長年にわたって創設者である先人諸賢の精神を堅持して活動を維持してきた大阪の国際宗教同志会と合流して、新たに“国際宗教同志会”として一本化されることは、国際宗教同志会の本来の姿に立ち還ったものであると考える」との田中健一京都国際宗教同志会会長(カトリック前京都司教)の見解を表明し、これまで京都国際宗教同志会で蓄えられてきた①牧野基金、②現金・預貯金の全額を新生「国際宗教同志会」に委託する旨、表明された。
京都国際宗教同志会の財産目録を左藤恵会長へと贈呈する西田多戈止旧京都国宗事務局長
この提案を受けて、京都国際宗教同志会の大阪国際宗教同志会への合流を歓迎し、京都の会長であった田中健一名誉司教を常任理事に、事務局長であった西田多戈止一燈園当番を理事として迎え入れ、大阪国際宗教同志会の名称を「国際宗教同志会」とすることが全会一致で承認された。なお、新しい「国際宗教同志会」の会長には、大阪国際宗教同志会の会長である左藤恵師(元法務大臣)が、理事長には三宅光雄金光教泉尾教会長が留任することになった。
京都国際宗教同志会の大阪への合流の経緯について記者会見する三宅善信事務局長
理事会に引き続き、神徳館国際会議場で開催された大阪国際宗教同志会の平成19年度第3回例会が、神仏基新宗教から約70名が集って開催された。大阪国際宗教同志会常任理事の大森慈祥辯天宗管長による平和の祈りと、左藤恵会長の開会挨拶に続いて、「京都国宗の大阪国宗への合流セレモニー」が行われた。病気療養中の田中健一京都国宗会長からのメッセージが代読され、京都国宗からの譲渡財産の目録が左藤恵会長へと手渡され、満場の拍手で歓迎された。なお、総会終了後、本件についての記者会見が三宅善信事務局長によって行われた。
2008年3月17日、国際宗教同志会では、中華人民共和国のチベット自治区で起きているチベット人による自由化要求デモ(中国側の発表によると「暴動」)による混乱について、『中国政府の暴力的手段による鎮圧行為に反対する要望書』を発表し、三宅善信事務局長がNHKからの取材を受け、その様子が同日夕方18:10~19:00の『かんさいニュース1番』で放映された。
「チベット暴動」について報じるNHKニュース
NHKでは、大相撲中継終了直後の18:00から、全国ニュースを10分間流した後、18:10から大阪を中心とした近畿2府4県+四国2県で放映されるローカルニュースの枠ながら、大相撲中継に続いているため、比較的チャンネル占有率の高い時間帯のニュース番組の時間帯である。この日は、一時は$1=95円台をつけるなど、急激に進んだ「円高」のニュースに続いて、18:18から18:26までの8分間『チベット暴動』のタイトルで、三日目となった「チベット自治区における民衆の自由化要求蜂起と、それを武力鎮圧する中華人民共和国当局」という枠組みで、チベット問題に詳しい高野山大学の教授と、チベット難民として長年日本で暮らす女性歌手に続いて、「ダライ・ラマと交流のある宗教対話団体」という枠で、国際宗教同志会が紹介されて、半年前のダライ・ラマ訪問団の様子や、『要望書』の内容について紹介され、三宅善信事務局長へのインタビューが放映された。
NHKニュースで紹介された国宗のダライ・ラマ14世訪問の様子
数日前からのチベット情勢の混迷を受けて、「国際宗教同志会」では、緊急事態発生時の対応マニュアルに従い、まず、国際宗教同志会が駐日中華人民共和国大使宛に送付する「要望書」案の起草を事務局が行い、左藤恵会長(大谷学園理事長・元法務大臣)、三宅光雄理事長(金光教泉尾教会長)をはじめ、国際宗教同志会の常任理事たちと連絡を取り合い、今回の事態の平和的手段による解決を求める中国当局への要望書発送の緊急意思決定を行った。
NHKニュースで取り上げられた国宗の中国当局に対する『要望書』
国際宗教同志会事務局では、直ぐに在阪のマスコミ各社にプレスリリースを行ったのを受けて、NHKや共同通信社が国際宗教同志会の『要望書』をニュースとして採り上げ、配信したものである。昨年9月28日、国際宗教同志会のダライ・ラマ訪問団がインド北西部のダラムサラにある「チベット亡命政府」にダライ・ラマ14世を訪問した際に、ちょうどビルマ(註:「ミャンマー」は軍事政権が付けた国名のため、欧米では、この正統性を認めない人々は、現在でも「ビルマ」という国号を使用することで、軍事政権への抗議の意思表示を行っている)での仏教僧侶による平和的な民主化要求デモを、軍事政権が流血の武力鎮圧事件が起こったので、国際宗教同志会は、ダライ・ラマ法王と共に、ビルマにおける悲劇への共同声明を発表しただけでなく、75分間にわたって膝を詰めた会談を行い、チベット情勢と中国政府の対応について意見交換を行ったことは既報のとおりである。
NHKニュースでコメントを述べる三宅善信事務局長
三宅事務局長は、中国政府に対して、真偽の如何に関わらず、武力鎮圧行動の即刻停止を訴え、ダライ・ラマ14世との真摯な対話を通じた問題解決を要求し、「自由な対話の度合いこそが、自己の行為の正統性と民主主義の唯一のメルクマールである」との見解を述べ、「国際宗教同志会は引き続き、この問題の監視役を務めていく」との見解を披瀝し、その模様は、NHKの番組『かんさいニュース1番』で放映された。
NHKニュースでコメントを述べる三宅善信事務局長
チベットにおける「信教の自由の確保」と、中華人民共和国における「少数民族の人権擁護」については、国際宗教同志会も中核団体のひとつとして、2008年6月27日から29日まで大阪と京都で開催される「G8宗教指導者サミット」においても、重要な課題として取り上げられることになっている。